松沢氏は3選確実といわれながら、神奈川県知事選への出馬をせず、東京都知事選への出馬を表明。この背景には、勇退が濃厚とされていた石原都知事の動向が関係してくる。両者はかねて親交が深く、石原都知事は松沢氏を勇退後の後継候補として目していたのだ。
ところが、石原都知事が急転直下、4選出馬を表明。直接対決を回避するため、松沢氏は泣く泣く出馬を取り下げ、任期満了に伴い、4月で神奈川県知事を退任した。石原都知事の変心がなければ、今も神奈川県知事職を務めていたと思われる松沢氏。なんとも、お気の毒というしかない。
その松沢氏が、6月16日、吉本興業グループのクリエイティブ・エージェンシーに所属すると発表。同社は地域振興を目的に、地域密着型の笑いを提供する「エリアプロジェクト」を展開しており、松沢氏は当面、同プロジェクトの推進役となる。
松沢氏は「政治から身を引くわけではないが、ここしばらくは充電期間だと思っている。自由な発言、自由な活動で人間としての幅を広げたい」と新天地での抱負を語った。さらには、「新喜劇だろうとお笑いだろうと、チャンスをいただければ挑戦したい」と仰天発言もしてみせた。
故横山ノック氏(元大阪府知事)や東国原英夫氏(前宮崎県知事)のように、お笑い芸人から知事に転身した例はあるが、その逆となると稀有なケース。もし、松沢氏がお笑いの舞台に立とうものなら、異例の事態となる。
政治の世界での失職で、吉本に身を寄せた松沢氏。悲哀すら感じる進路だが、松沢氏の“本意”は政治活動にあるはず。主客転倒にならぬことを祈りたい。
(蔵元英二)