フリーエージェント権行使(以下=FA)の申請期間が始まった10月24日、阪神・谷本修副社長兼球団本部長(55)が報道陣に囲まれた。今オフのFA補強について聞かれ、ハッキリとこう言い切った。
「極めて、消極的です」
今オフ、矢野阪神はFA市場を静観する。その前日から“確実な情報”として飛び込んできた話もあった。本塁打王3回、ベストナイン&最高出塁率2回、打点王1回、2013年MVPにも選ばれた東京ヤクルトのウラディミール・バレンティン外野手(35)がFA権を行使するという。
バレンティンのFA権行使の情報はヤクルトサイドから漏れてきたもの。関係者によれば、ヤクルトはバレンティンに「2年の複数契約」を提示。年俸額は不明だが、バレンティンの代理人は「交渉の窓口を広げたい」と回答してきたという。故障さえしなければ、70打点以上の計算も立つ選手だ。
守備難、来季36歳という年齢から「興味ナシ」の球団もあるが、「変化球主体の日本の野球に来日1年目の新外国人選手が対応できないケースも多いので」と、前向きに捉えるチームも少なくない。
某球団のスタッフが「私見」と、こう語っていた。
「バレンティンの現推定年俸は4億4000万円。それ以上の年俸を提示するとなると、ちょっと…」
バレンティンのFA権行使のウワサは水面下で囁かれていた。阪神副社長の「消極的発言」は“バレンティン獲得はない”と、暗に宣言したものでもあるのだ。
「ソフトバンクがバレンティンに興味を示しているとの情報も交錯しています。資金源が豊富なソフトバンクなら4億円以上でも払えるでしょうし、巨人もマンザラではないと聞いています。マシソン(3億5500万円)、ビヤヌエバ(2億2500万円)、森福(8400万円)が退団した分をそのまま充てれば軽く4億円に届くし、今季限りで引退する阿部慎之助の推定年俸も1億6000万円でした」(ベテラン記者)
日本一を目指す巨人にとって、「これ以上、ソフトバンクに好選手を行かせるわけにはいかない」との思いもあるようだ。
「DeNA・筒香のメジャーリーグ挑戦が決まりました。狭い横浜スタジアムなら、ヘタクソなバレンティンの外野守備でも致命傷にはなりません」(前出・同)
こうした情報を聞くと、「マネーゲームには参戦しない」とする阪神の選択は正しいのではないか? もっとも、阪神は福留、糸井のレギュラー外野手の年齢的ネックを解消しなければ、優勝戦線に加わることはできない。日本球界向きの新たな外国人選手を探すようだが、矢野燿大監督は覚悟を決め、若手育成を最優先事項に挙げたそうだ。
「近年の阪神はシーズン途中、緊急で外国人選手を獲ることを繰り返しています。オフの間に『計算の立つ外国人選手』を獲れば、腰を据えて若手育成に専念できるという意見も球団内部にはあるそうです」(在阪記者)
バレンティンの去就に注目が集まるのは間違いないようだ。(スポーツライター・飯山満)