4連敗のストレート負けで日本シリーズを終了した巨人・原辰徳監督(61)がシーズン終了のオーナー報告を行った(10月24日)。待ち構えていた記者団とのやり取りの中で出たのが、「パ強セ弱」の打開策。原監督は、「セ・リーグもDH制(指名打者制)を使うべきだろうね。相当な差をつけられている感じが…」と独自の理論を展開した。
近年、パ・リーグはセパ交流戦でも“圧倒的な強さ”を見せつけている。他メディアでも伝えているが、今年の日本シリーズを終えて、セ・リーグとパ・リーグの勝利回数が35回で並んだ。勝ち星の数で言えば、セ・リーグ202勝、パ・リーグ205勝と逆転に成功している。
原監督はWBCなど国際試合での指揮経験を持つだけに、「DH制」によって、得点能力がいかに高まるかも実感しているのだろう。
「レギュラーが増えたほうが少年たちだっていいと思う」
守備難でも、打撃の一芸に秀でた選手にもチャンスが拡大すれば、野球人口の拡大にもつながるとも力説していた。NPB関係者によれば、「セのDH導入は何度か話に出たことはある」という。原監督の発言は、今後大きな反響を呼びそうだ。
セ、パ両リーグを経験した投手出身のプロ野球解説者がこう言う。
「セ・リーグはDH制がないのに、ピッチャーの練習メニューがパ・リーグ球団とほとんどいっしょ。ピッチング練習が最優先なのは当然としても、セのピッチャーは打席に立つので、もっと、バントの練習をすべきでは」
DH制による最大の利点は、ピッチャーを打席に立たせず、打撃専門の選手を出場させることにある。ピッチャーが打席に立たないパ・リーグはともかく、セ・リーグのピッチャーもバントの練習をほとんどやらなくなった理由は、「先発、中継ぎ、クローザー」の分業制が確立されたからだ。先発投手はある程度、バントの練習もやるが、中継ぎ、クローザーのピッチャーはシーズン中、打席に立つことがほとんどない。打席が回ってきたら、大抵は代打が送られるからだ。
「バントを使って1点ずつ積み上げるスタイルから、ビッグイニングを作る攻撃野球が定着しました。バントは単に走者を進めるだけの作戦に変わりました。攻撃的野球をするのなら、普段からDHを使っているパ・リーグと、交流戦で代打か控え選手をDHに入れ、いつもと違う打順で試合に臨むセ・リーグとでは、最初から違いますよね」(前出・プロ野球解説者)
DH制の導入論に、他のセ5球団も賛成の方向だという。
引退して二軍監督に就任した巨人・阿部慎之助、阪神を退団して新天地を探している鳥谷敬、引退表明をしたヤクルト・畠山和洋…。DH制があれば、彼らの現役生活も違うものになっていただろう。守備難のバレンティン(ヤクルト)、ソト(DeNA)もDH制があれば、もっと活躍できそうだ。バントによる心理戦が見られなくなるのは残念だが、原監督によるDH制の導入論は現代の野球スタイルを言い当てている。(スポーツライター・飯山満)