この日本シリーズ終了と同時に判明したのが、阿部の今後。将来の指導者という含みを持っての引退表明だったが、そのポストが明らかになった。二軍監督に就任する。その脇を固めるのは、山口鉄也氏、実松一成氏、二岡智宏氏(三軍担当)、加藤健氏といった面々。いわゆる、阿部の現役時代をともに戦った元同僚たちである。しかし、ここまで阿部を慕う仲間たちが揃うと、「アノ人」の去就が気になってくる。フリーエージョント(以下=FA)の人的補償で埼玉西武に移籍した内海哲也投手のことだ。
内海は故障などもあり、今季の一軍登板はナシ。二軍戦7試合に投げ、0勝2敗、防御率も9点台という不本意な成績に終わっている。すでに発表された戦力外選手リストの中に、内海の名前はなかった。西武は世代交代を急いでいるが、「まだできる」と判断されたのだろう。
「FAの権利をすでに取得しているので、動こうと思えば動けますが、巨人がどう判断するかですよね。『選手』として獲得するとしたら、西武は年俸1億円以上をもらっている日本人選手が少ないので、内海はトップ5傑に入っています。人的補償が発生するので、そういう状況を考え、内海は動かないと思います」(ベテラン記者)
投手の育成は山口氏が担当することになりそうだ。もちろん、一人で担当するわけではないが、阿部と現役時代をともに過ごした生え抜きの投手陣の中で、もっとも優れた配球術、技術論、コンディションなどの知識を習得しているのが内海だという。
内海が現役生活を全うし、古巣に帰還する時が「阿部体制」の真のスタートとなりそうだ。
「阿部が一軍監督となった時、誰を腹心に置くのかを考えた場合、内海が真っ先に浮かんできます。配球論でも、2人にしか分からない世界観があるというか」(巨人OB)
侍ジャパンという“12球団混合チーム”が定着した影響もあり、オフの自主トレを他球団の選手と行うのも珍しくなくなった。関係者によれば、西武・内海は巨人若手も自主トレに連れて行く予定で、そこには当然、西武投手もいるだろう。内海は個人で契約したトレーナーに練習メニューを作成させている。その練習の意義、目的は内海の口から若手に伝えているという。
内海は自身の復活を目指すのと同時に、“来るべき日”に備えているのかもしれない。(スポーツライター・飯山満)