今季、原巨人はペナントレースの優勝こそ果たしたが、先発、リリーフともにコマ不足という状況は最後まで続いた。
「原辰徳監督がドラフト会議前日の最後の会合でお願いしたのが、ピッチャーの補強でした。将来のエース候補として奥川恭伸(星稜/ヤクルト指名)の1位入札に異論は出ませんでしたが」(球界関係者)
ソフトバンク打線にここまで打ち込まれた後だったら、原監督は「ピッチャーの補強」とは言わず、「即戦力投手を!」と訴えただろう。奥川の抽選に外れ、その後、社会人・東芝の宮川哲の再抽選にも外れた。日本シリーズでの猛攻を受けた後だったら、3度目の入札も、社会人か大学生の投手に行っていたはずだ。
巨人が1位指名した青森山田の堀田賢慎投手について、こんな情報も聞かれた。
「佐々木朗希(大船渡/千葉ロッテ指名)がいたから、クローズアップされなかっただけ。スカウトの間では、『東北ナンバー2』なんて言われていました」
これは他球団だが、東北地区担当のスカウトのセリフ。ナンバー1が佐々木で、それに次ぐ潜在能力を秘めたピッチャーだと評価されていたそうだ。
「185センチの恵まれた体。オーバースローで全身がバネというか、腕を振り切った時に飛び跳ねるような躍動感のあるピッチャーです。真っ直ぐも速いし、変化球でもしっかりストライクの取れる好投手ですよ」(同スカウト)
甲子園出場経験はない。しかし、3、4年後には先発ローテーションを狙うピッチャーに成長すると高評価がされていたそうだ。
「どの球団も3位以内の指名を予定していたピッチャーです。巨人は抽選で2度も外れたので、指名を繰り上げたのでしょう。良いドラフト指名だったと思います」(前出・同)
堀田に対する評価はともかく、高校生中心の指名はコワイ。というのも、前出のスカウトは「3、4年で一軍戦力」と言ったが、大半の高校生は一軍戦力として定着するまで5年は要する。つまり、ドラフト指名した監督の任期内に活躍できない可能性のほうが高いのだ。そういった意味では、巨人を始め、今年は多くの球団が高校生中心のドラフト指名を行っており、「次の監督に備えた」とも言える。
優勝を至上命令とされる巨人が指名した即戦力投手は2位の太田龍(JR東日本)だけ。補強しないまま2020年を戦うとは思えない。日本シリーズでの劣勢、ワンサイドゲームのような敗北。これを受け、原巨人は今オフもFA市場での大型補強を考えていると見るべきだろう。
(スポーツライター・飯山満)