矢野阪神がペナントレース終盤戦で怒濤の6連勝。チーム功労者・鳥谷敬(38)への無情な引退勧告、シーズンを通してのエラーの数が102個、外様監督に対するOBたちのアツ…。こんな状態なのに、クライマックシリーズ進出(以下=CS)を143試合目の最終戦で勝ち取ったのだ。
「リリーフ陣が絶好調でしたからね。投手陣全体で見ても、9月21日広島戦途中から、29日中日戦8イニング目まで、42回連続無失点。救援陣だけの防御率は2・70。12球団トップですよ」(ベテラン記者)
ペナントレースは“ボロボロ”でも、「日本一」なんてこともあり得る状況だ。CSファーストステージでぶつかるDeNA、そして、ファイナルで対戦するかもしれない巨人からも「阪神、要注意」の声が聞かれた。また、DeNA、巨人が対戦したくないリリーバーとして見ているのが、藤川球児(39)だ。
「今年の藤川は完全に復活しました。メジャーリーグ挑戦は失敗に終わり、右ヒジにもメスを入れました。独立リーグにいったん落ちたのに、NPBに復活。39歳なのに、クローザーの座も奪い返してみせました」(球界関係者)
藤川の復活は、新たな投手再生のサンプルにもなりそうだ。
「メスを入れた右ヒジに違和感がなくなったのも大きいと思います。球団も待ってくれましたが、藤川には『待ちたい』と思わせるオーラも出ていたんです」(前出・同)
「火の玉ストレート」とも称された直球が復活したと報じられているが、関係者に聞くと、少し違う。投球スタイルを少し変えていた。
「かつての藤川はストレートを目一杯の力で投げ込み、対戦打者をキリキリ舞いさせていました。今の藤川は内外角のどのコースに投げればいいのかを考えて投げ込んでいます」
また、練習メニューも変えたようだ。走り込みの量が増えた。距離だけではない。若手とタイムを争ったら勝てないかもしれないが、藤川は競争しようとする。ダッシュ系の運動量も増やした。こうした肉体改造がようやく形になって表れたのが今季であり、ここに内外角に投げ分けるテクニックも加わったわけだ。
「ランニングをしながら、ピッチングの時にどこの筋肉を使って投げているのかを考え、その部位を意識しながら走っていました」(関係者)
特別に何か変わったことをやる必要はない。走り込みという昔ながらの練習を地道に積み重ねることが大切なのだ。
藤川の復活だけが奇跡のCS進出につながったわけではないが、DeNA、巨人はクローザー・藤川にイヤなものを感じている。屁理屈を言う前に体を動かせ――。猛練習が結果に表れない時も自分を信じる。この精神力は若手投手のお手本でもあるが、誰よりも、藤浪晋太郎に見倣ってほしいものだ。(スポーツライター・飯山満)