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球界因縁のライバル(33) 田中VS斎藤(上)

 セ、パ分立60周年を記念して、11月22日に東京ドームで「プロ・アマNPB60周年センバツ野球」が行われる。大学球界の選抜チームと、プロ野球界の26歳くらいまでの若手選抜チームが対戦するメモリアルゲームだ。目玉にしようとしているのが、楽天・田中将大VS早大・斎藤佑樹の甲子園以来の対決。しかし、田中は難色を示しているという。「僕が選手を選ぶワケじゃないですから」と素っ気ないコメントに本心がにじみ出ている。

 2006年夏の甲子園大会決勝戦。駒大苫小牧・田中は「ハンカチ王子」という国民的な人気者になった早実・斎藤と死闘を演じた。延長15回、37年ぶり2度目の決勝引き分け再試合の末に敗れている。『ハンカチ王子世代』と呼ばれたように、主役は斎藤で、田中は引き立て役にすぎなかった。が、ドラフト1位で楽天入りして3年目。野村監督から「神様・仏様・マー君やな。稲尾の後継者が出来た」と絶賛されるように、プロ野球界を背負って立つニュースターに成長している。
 1年目に11勝7敗で新人王獲得。「マー君、神の子、不思議な子」と野村監督から命名されている。2年目の昨年は腰や右肩の故障もあり、2ケタに届かない9勝7敗1セーブという成績に終わった。しかし、3年目の今季は開幕から2完封を含む4試合連続完投勝ちして、「神の子」から「神様・仏様」に昇格している。その後、右肩の張りを訴え、一時期戦列を離れたものの、復帰後にすぐに勝ち投手。「田中は開幕前のWBCで大化けして帰ってきた。松坂などの体験談を聞き、実際にメジャーリーガーと対戦して最高の勉強をしてきたんだろう。ひと皮もふた皮もむけ、全く別人のようだ」というナインの評価は変わらない。

 プロ野球界で3年目の雄飛を現実のものとしている田中にしたら、今さら甲子園のライバル、神宮のエース斎藤との投げ合いなどで騒がれたくないというのは、まぎれもない本音だ。斎藤がプロ入りして、自分の立場に追いついて来たときに初めてライバルとして認めることになるのだろう。
 「ハンカチ王子世代と言われたが、今はマー君世代と呼ばなければおかしいだろう」。球界OBがこう明言する。甲子園ではハンカチ世代の田中だったが、今や立場が逆転。早大・斎藤の方がマー君世代と呼ばれるようになったのだ。斎藤がプロ野球を目指すのならば、当然のことだろう。田中を最大のライバルとして、追いつき追い越せで、プロ野球界でも再び立場を逆転するしかない。
 ハンカチ王子狂騒曲の最中、早実の大先輩のソフトバンク・王貞治監督(現球団会長)は、胃ガンの手術で胃を全摘出、入院加療中だったが、かわいい後輩に親身のアドバイスを送っていた。「ワイドショーで『ハンカチ王子』などと騒がれているのは良くない。大学に進学して、本当の実力を見つけてプロの世界に入ってきてほしい」と。
 甲子園で優勝直後はプロ入りに気持ちが傾いた時期もあった斎藤だが、王監督が望むように、早大教育学部に進学して着実に実力を身につけてきている。春季リーグ戦、1年生で開幕投手を務め勝利。07年6月3日の早慶戦では10年ぶりに神宮を満員にしている。さらに、早大優勝に貢献して1年生で史上初のベストナイン。その後の全日本大学野球選手権でも早大優勝で1年生として史上初のMVPを獲得している。その後も白星を積み重ね、20勝の大台に乗せている。

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