善福寺は空海によって天長元年(824年)に開山されたと伝えられる。当初は真言宗の寺院だったが、鎌倉時代に、親鸞に導かれた了海によって浄土真宗に改宗されたという。都内有数の古刹で、福沢諭吉など知名な人物の墓が多い。
また、安政6年(1859年)には、境内に初代アメリカ合衆国公使館が設けられた。タウンゼント・ハリスらが在留した。現在、善福寺の参道に初代米国公使館跡を記す碑が建てられている。
大イチョウは見事であった。
このイチョウは雄株で、昭和20年(1945年)の東京大空襲で本堂が全焼した際、かなりの損傷があったそうだ。しかし、幹周り約9メートルの巨木は、なお旺盛な樹盛を見せている。樹齢は750年以上と推定されている。
大イチョウには別名がある。枝先が下に伸びていることから「逆さイチョウ」といわれている。また、親鸞が地にさした杖から成長したという伝承もあり「杖イチョウ」と呼ばれることもある。
大イチョウは、参道を歩いた正面にある勅使門の近くに立っており、参道からでも勅使門ごしに見上げることができる。
この勅使門は、中門だが、伝承では、最初の蒙古襲来・文永の役(文永11年・1274年)の際に亀山天皇の勅使寺となり、勅使門と命名されたという。
善福寺参道に、地下から湧き出る清水の「柳の井戸」があった。空海が杖を地面に突き立てた場所から吹き出したなどの伝承があるそうだ。
「柳の井戸」のそばに建つ碑には「大正十二年の関東大震災や昭和二十年の空襲による大火災の際に、この良質な水がどれほど一般区民の困苦を救ったかを心にとどめ、保存と利用にいっそうの関心をはらうべきものと思われる」と記されていた。(竹内みちまろ)