いくら丸好酒場が4時から飲めるからといって、更正歩道橋下に列立てて並ぶというのもはばかられ、ひとまず荒川土手を登ることにした。荒川も大きいが、荒川を蓋(おお)う空も大きい。
河川敷で少年野球の練習は、予想通り。競輪選手の本気の練習は、初めて見ました。土手下に、ややくたびれたカネボウ御用達の床屋を発見。町の通りに名を残した鐘ヶ淵紡績のご威光です。カネボウは資生堂と化粧品の人気を二分するも、合併話がこじれて失速。いつからか、同社のKが同窓会に顔を見せなくなった。もういいじゃないか、飲もうよ。
「丸好酒場」開店のお時間となりました。くたびれるから月・火・金はしばらくの間、休業するそうです。母と娘とおぼしきおふたりの丁々発止を、丸好ハイボール(酎ハイ)を飲みながらしばし観賞。他の客の注文した茗荷(みょうが)の、安全かつ効率的な切り方もついでに観賞。茗荷の芽が、伊料理や仏料理に重宝されていたとは知りませんでした。
むかし散歩は、犬の川端(かわばた)歩きと呼ばれて、蔑(さげす)まれていたそうな。ここ東向島は「裏道を行こう。横道を歩まう」と、手書きの玉の井地図まで作成して、墨東の川端歩きを貫いた永井荷風(作家)が好んだ街。すこし頬染めた川端歩きの犬は薄暮の歩道橋下で、人が更正してない以上、犬が更正してなるものかと嘯(うそぶ)いた。
予算1300円
東京都墨田区東向島6-63-6