「4年前に、俺はこの『G1 CLIMAX』、頂点に立ったんですが、あのときは背伸びをしていて、正直なことを言えませんでした。ただし、いまの俺なら、自信を持って言える!この新日本プロレスの主役は…俺だ!」
試合後に行われた優勝セレモニーの後、10,280人超満員札止めの大観衆から送られた大内藤コールに包まれる中、マイクを掴んだ内藤はファンの支持が得られなかった4年前に『G1』初優勝をしたときの決め台詞「新日本プロレスの主役は俺だ」というフレーズを久々に叫んだ。
現在はロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンのリーダーとして、新日本プロレスで一番の人気を集めている内藤だが、4年前、エース棚橋弘至を優勝決定戦で下し『G1』初優勝という、本来であればその後のスター街道が保証されるほどの価値ある勲章を得たにもかかわらず、まったく活かすことができなかった。2014年の1.4東京ドーム大会でオカダ・カズチカに挑戦したIWGPヘビー級選手権は、ファン投票の末、中邑真輔対棚橋弘至のIWGPインターコンチネンタル選手権に敗れ、セミファイナルに降格した。ラフファイトをするわけでもないのにブーイングを浴びる日々。しかし、2015年のメキシコCMLL遠征で現地のユニット、ロス・インゴベルナブレスに合流したことから流れが変わり、新日本マットにも持ち込んだことで日本でもロスインゴ旋風が起こり、内藤は制御不能の反体制派レスラーとして大ブレイク。昨年はIWGPヘビー級王座の初戴冠、プロレス大賞のMVPを受賞。決め台詞の「トランキーロ!焦んなよ」はプロレス流行語として広く認知されている。
リング上で、4年前は「背伸びをしていた」と当時の素直な気持ちを明らかにしていたが、あの苦しんだ時期を乗り越えたからこそ内藤やロスインゴの大ブレイクに繋がったのは間違いない。大会翌日、『G1』覇者の内藤に4年前と同じく『2018年1月4日東京ドーム大会メインイベントでのIWGPヘビー級王座挑戦権利証』が与えられた。一夜明け会見でも語っていたが、内藤にとって1.4東京ドームメインの舞台は未知なる領域。IWGPヘビー級のベルトよりもドームのメインに立ちたい気持ちのほうが強いという。権利証には防衛義務があるが、内藤は「挑戦権利証の防衛戦が組まれるのであれば、俺は石井(智宏)を指名しますよ。あとは、昨日バックステージで言いましたよ。思ってることは口にしないと、思ってるだけじゃ、誰に何も伝わらないよ。何か意見があるなら、言葉にして口にして皆様に伝えないと、何も始まらないからね。もし、この権利証であったり、内藤であったり、東京ドームのメインイベントに関しても、『俺が挑戦したいんだ』と『俺がやりたいんだ』という意見があるのであれば、それは口に出すべきですよ。『俺がいまやりたい』とハッキリと口にしてるのは、石井だけですからね。俺に勝った(バッドラック)ファレであり、俺と対戦していないBブロックの選手でありね、『俺にやらせろ』という選手がいるなら、ハッキリ口に出すべきですよ」とコメント。後日、10.9両国国技館大会で石井との防衛戦が発表された。同時に10.9両国大会のメインで、オカダ対EVILによるIWGPヘビー級選手権試合の開催も決定。内藤対石井、オカダ対EVILの勝者が1.4ドーム大会のメインに立つことになりそうだ。内藤は「ドームのメインはEVILとやりたい」と言うだろうが、4年前のリベンジを果たすなら相手はオカダしかいない。
7月17日の札幌・北海きたえーる大会から、最後の両国国技館3連戦まで全19大会に渡って開催された『G1 CLIMAX 27』だが、今年は全国的に前売券が飛ぶように売れたという。両国3連戦は3日連続札止めの快挙。各会場のファンの熱狂ぶりも半端ではなかった。新日本プロレスの勢いはとどまることを知らない。
下半期の新日本マットは、『G1』覇者として1.4ドーム大会のメイン出場へ王手をかけた内藤を中心に回って行くのは確実だ。1.4ドームまでに内藤の存在を脅かす選手が出てくるとは考え難い。そう思ってしまうほど、今年の『G1』での内藤の試合は負けた試合も含めて自信に満ち溢れていた。内藤が東京ドームのメインでIWGPヘビー級王座を奪還したとき、真の新日本プロレスの主役になる。
取材・文/どら増田
カメラマン/広瀬ゼンイチ