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これは名刺代わりの1枚! 20日アルバム発売の「アカシアオルケスタ」に直撃インタビュー

 正直、教えたくない位良い作品と思う(笑)。誤解を招かないように書くなら、「知ってる事を誇りたい」ほど。だから「アカシアオルケスタ」を聴いた自分はラッキーと思う。「なんでこんなに良いバンド今迄知らなかったのだろう…?」と。今作「ヒョウリイッタイ」は会心の傑作。彼等を表すなら「ピアノオルタネイティブ」がとてもしっくりとくる。メンバー構成はヴォーカル、ベース、ドラム、にキーボード(ピアノ)。ギターがいない事が微塵も気にならないバンドサウンドは一度聴くと確実にクセになる。藤原岬の声は曲によって響きを変え、その詩の世界観も叙情的。キーボードの西村広文が奏でるサウンドはギターよりもメロディアスで印象深い旋律。その音の空間の隙間を縫い小気味よく、そして確かな存在感を醸し出す佐野 優のベース。リズムの屋台骨となり、それぞれのサウンドを活かし、ソロでは拘りの音を叩き出すドラムの北川慶祐。そんなメンバー4人に最新アルバム「ヒョウリイッタイ」について聞いた。

 −−今回のアルバムは北川(ドラム)にとってどういう物ですか?

 北川「作り始める時に全員で一致していたのは、藤原の歌詞の世界観+ピアノロックに原点回帰しょうと。前作がエレクトリックな分、今作はピアノを前面に押し出して行こうということ。自分の(ドラム)に関しては凄く楽しんでプレイ(演奏)できたと思います。やんちゃで激しくて、合間に音をちりばめる…やりたい事が出来た感じ。作曲という面では、いろんな曲を書いたんですが、どの曲でも『アカシアオルケスタ』らしさが出たと思います」

 −−曲はセッションで作られたりしますか?

 北川「今回、セッションで作った曲はなくて、それぞれが持ち込んだ曲を演奏して録るという形でしたね。因みに僕は3、5、6、7、9、11を担当しました。僕の曲に関しては原型はメロディーの殴り書きしかないので、アカシアでその場で曲にしてもらう感じで。そういう作り方なんで、バンドの特色がよく出ていると思います」

 −−佐野(ベース)さんにとってはどんなアルバムですか?

 佐野「ギターレス、ピアノロックバンドなんですけど、ベースという楽器は(曲の)土台を支えたりで裏方のイメージが強いんですけど、アカシアではその役割から開放されて、自分がリードをとれるというか、リベロじゃないですけど、ディフェンスにもオフェンスにもなれて、自由にさせてもらえている感じですね。自分が動きやすい環境をメンバーが作ってくれていて、ベースのイメージを広める事が出来たアルバムだなと思います」

 −−良いところで、ベースが耳に入ってくると思いました。佐野さんはどの曲を作曲されたんですか?

 佐野「10曲目の『ヒコウキ雲』の作曲をしましたが、今迄の作品でもバラードを書いて来ましたが、ヴォーカル(藤原)に関して、伸びのある低音が売りだと思っていて。かつ、ピアノロックの良さが前面に出るのがアカシアの色だと。伸びやかな低音が聴ける優しい雰囲気の楽曲として形にできたと」

 −−では西村さんにとっては?

 西村「バンドとしてより、自分にとってこのアルバムは、僕の名刺です。その一言につきます。それ以外、特にいうことはないという感じです。僕個人、西村広文が『どういうピアニストか?』と聞かれたら、このアルバムを出しますという作品ですね。以上です(笑)」

 −−潔いですね(笑)。今作を聴いて、ピアノマンとして西村さんのイメージを確り感じる事ができました(笑)。

 西村「前の作品出そうと思わないですね。僕のことを知らない人に『どんなピアノ弾くの?』と言われた時に迷わずこのアルバムを出します。4曲目の『シャボン玉』8曲目の『日々草々』を書いていますが、どちらも自分らしい作り。ピアノのリフから作ってフレーズも手癖からそのまま出したという感じです」

 −−『アカシアオルケスタ』というバンドは聴いていて『ピアノオルタネイティブ』というジャンルが凄くしっくりくると思いました。

 藤原「その表現、嬉しいですね」
 北川慶祐「オルタネイティブ・ピアノロックといってたんですが、長いんで、最近はピアノパンクロックと(笑)」

 −−こんな良いバンドなんで今迄知らなかったのかなと(笑)。

 佐野「ありがとうございます。(知らないのは)それは僕たちがまだまだ頑張りきれていないから…(笑)」

 −−では藤原さんにとってはどのようなアルバムですか?

 藤原「私、個人的には…良い意味で調子に乗って表現できた1枚だなと思います。いろんな表情が出せたと思いますし、今までなかった自分も勝手に出てしまったというか、サウンドと曲に導かれて声色だったり全てに関して調子乗ったなぁと(笑)」

 −−そんな中、特にこの曲が気に入っているなどは?

 藤原「曲のカラーがそれぞれ違うのでどの曲とは言いがたいですが、『スーパースター』が象徴的かな? とは思います。今迄のアカシアオルケスタを知らなかったとしても、初めて聴く人がこの曲(スーパースター)を聴いてくれたらキャッチーで入りやすいんじゃないかな? と思いますし、今迄の私達を知っている人からすれば、凄く変化しているので驚いてもらえると思います。これまで、こんなにキャッチーな曲をやったことはなくて。私達にとっても挑戦だったので。実際やってみるとすんなり入れたし、『スーパースター』を聴いてから他の曲を聴いてもらうと対比感が面白いかなぁと思います」

 −−それぞれ皆さんが制作中に何かこだわったところはありますか?

 北川「ドラムのサウンドにはもの凄いこだわりましたね。楽器選び、チューニング。楽器が少ない分、音数の抜き差し。ベースが前に出る、引っ込むと同じ様に、帯域的に埋めなければならないところを自分なりに判断して、シンバルを打つ数、スネアのチューニングにもこだわりました」
 佐野「コードというところでいうと、ピアノとベースしか、音を鳴らす楽器がないので、ショボくならないように、最大限に音を活かすにはどの立ち位置がいいか、自分の音の置き場所にこだわりましたね、音量、音色にもこだわりました」

 −−レコーデングにもの凄くこだわったんですね

 藤原「録った時点で凄くよかったんです」
 北川「TD(トラックダウン)前に、録音の時に音を決めて録ったので。それとエンジニアがムッチャ良くて」

 −−生っぽさもあって、加工されていないと思いました。西村さんは?

 西村「僕、制作秘話話すのが大好きで(笑)。なんでかというと、作品ができたから話せるんで(笑)」

 −−確かにそうですね(笑)。

 西村「曲作って、アレンジして、レコーディングして、ミックス終わって、盤(CD)ができてやっと取材になったときにやっと『制作秘話』って話せるじゃないですか! 本当にそれが嬉しいんですけど…制作秘話としてはこのアルバムは2012年と2013年をまたいだっていうことですかね。それをその場にいなかった僕がいうのもなんですけどね(笑)」

 −−いなかったんですか(笑)?

 西村「いませんでしたが、このアルバムはもの凄いタイトなスケジュールの中で制作したんです。曲を揃えてレコーディングするまで最終まで1か月〜2か月位。(今作は)3/20発売じゃないですか、正月も何もないわけですよ(笑)。年が明ける瞬間、藤原はレコーディングブースで歌を歌ってたっていう」
 藤原「その話、私がしようと思ってた…」
 西村「そんなの知らないですよ(笑)。バンドとしての制作秘話ですから(笑)。それとメンバー間で揉めなかったです。考えすぎる時間があると、こだわりすぎてグチャグチャになることがあるんですけど、今回はもう時間がない中で、みんなで同じところ目指して走ってたから『いいやん! いいやん!』でいろんな感情の相乗効果がありましたね」

 −−藤原さんは如何でしたか?

 藤原「えーっと。個人的には西村の言った年をまたいで歌入れをしていたという。ボーカルブースにひとりぼっちで。二人(北川さんと佐野さん)はブースの外にいたいんですけど。私の予定では、歌入れが終わって晴れて『明けましておめでとう!』を言いたかったんですけど、あと少したまま、結果スーパースターの最後、『痛んだ傷は強さに変わる』と歌っている時に0時0分を廻って。レコーディング中で声を張り上げられないなか、凄く地味に『おめでとう』って年明けしたなってのがあります(笑)」
 北川「あんなパッとせぇへん年明けはじめてでしたね(笑)」
 佐野「僕なんかパソコンで作業してる時に『あっ、(年)跨いだで』と」
 北川「それを聞いて、歌ってる藤原に『年、跨いだらしいです』と(笑)」
 西村「いい制作秘話ですね(笑)…余談ですけどレコーデングのフィナーレで誰かさんインフルエンザで倒れたり(笑)」
 北川「『オモチャ箱』って曲でみんなでパーカッション持ち合って録る時に(佐野さんが)いなかったっていうね…(笑)」
 西村「僕は(佐野さんが)そのことを制作秘話で話すのかと思ってましたけどね(笑)」
 佐野「(この話自体が)制作秘話(笑)」
 全員苦笑。
 北川「あと『日々草々』って曲はアカシアとしてはラップ調であまりない曲調の試みで。で、CDになった時に音で届けたいと思ったんで、『予告的な事も(曲のニュアンスも)話さないでおこうね』とバンドで話していたんです。けど、仙台のライブ会場で(藤原)テンション上がったか何かしらんけど、MCで『(今作では)ラップとかしちゃって!』といってまうという…(笑)」
 全員笑。
 西村「あっ! て(笑)」
 北川「『あっ、それ言ったらあかんヤツ(こと)やん!』ってステージ上が凍り付きましたね(笑)」
 藤原「お客さんに『内緒にしといてね〜ツイッターとかしないでね〜』とお願いしました(笑)。みんな短期間の中で楽しんでレコーディングしたといっていますが、私は振り返りたくない壮絶な日々でした。歌詞が…ね」
 北川「藤原が歌詞全部書くんでね」

 −−バランスのとれた凄くいいアルバムですね。バンドのイロイロな雰囲気が楽しめるアルバムだなと。では最後にそれぞれからメッセージをお願いします。

 藤原「『アカシアオルケスタ』メジャーアルバム3枚目になるんですが、毎回自信を持ってリリースしていますが、今回は本当に、私達4人ともがワクワクして『早く出したい!』と思えたアルバムになったので…『やんちゃな大人を聴いて下さい!』という感じですかね。で、なんといってもアカシアが一番の自信を持っているのはライブパフォーマンスなので、期待してライブに来て欲しいです。その期待を飛び越えるだけの自信を持っているので、是非ライブに来て欲しい」
 佐野「アルバムも3枚目になるわけですけど、毎度ながら思うんですけど、バンドとして更に挑戦できたなと。で、いい形で答えを出せたなと。コレが毎回スキルアップに繋がって、さらに強力になった、渾身の作品になっているのでこの作品で『アカシアオルケスタ』を世に広めたいです」
 北川「こんな『ピアノロック聴いた事あるか?』と。絶対他のバンドができへんようなコトをやれてるんじゃないかと思います」
 西村「バンドが元気がない時代、はては音楽業界自体が下火の中で本気でやってます。しんどいなと思っても『まだまだ行ける! 行けるとこまで行ったろう!』という気持ちです。今の時代、視聴も気軽にできるし、PVもインターネットでも観れますから。1回聴いて、気に入らんかったらそれでもいいんで。気に入ったら是非アカシアを手に取って下さい!」

 最後にタイトルについて聞いたところ、ボーカルの藤原がこう答えてくれた。「今作は『光と影』を歌詞の中で表現したいとメンバーに話して、曲が出そろってからタイトルを決めました。今回の世界観を表した言葉が『ヒョウリイッタイ』だったんです」とのこと。今作までの3タイトル全て最後の母音が“イ”で終わる言葉で作品をリリースしてきた「アカシアオルケスタ」。その突き詰めた“こだわり”と“やんちゃな世界観”が最大限に表現された今作『ヒョウリイッッタイ』を是非とも体感して欲しい。(牛嶋 一成)

■公式HP http://acacia-o.com/info.html
■アカシアオルケスタ 2007年、藤原岬(Vo)を中心に大阪で結成。西村広文(Key)、佐野優(Ba)、北川慶祐(Dr)という4人編成のバンド。ロックやポップス、ジャズ、ラテンなどのあらゆるジャンルを網羅したうえで、ピアノとビートがカラミ合うサウンドと個性的な歌声は、一度聴いた耳から離れない。20日発売の「ヒョウリイッタイ」がメジャー3作目。地元大阪だけではなく全国での精力的なライブ活動もこなし、3月30日(土)には、大阪のライブハウス「BIGCAT」でワンマンライブ『アカシアオルケスタ独壇場
「ヒョウリイッタイ」宴奏会』をおこなう。

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