球団は詳細について明言を避けたが、関係者の話を総合すると、不振と故障で不本意な成績に終わった井端に対し、球団は契約更改の下交渉で、1億9000万円から野球協約の減額制限(1億円超は40%、1億円未満は25%)をはるかに超える80%以上減の3000万円前後を提示した。
これに難色を示した井端と球団は、話し合いの場を何度も持ったが、井端の意志が固く、退団に至ったという。
井端は10月に右ヒジ、右足首の手術を受けており、春のキャンプに間に合うかどうかも微妙な状況。井端問題について、落合博満GMは「彼に対しては、それなりのものを例年払ってきている。故障がちでメスも入れたし、億以上を出して球団がリスクを背負えるか、という判断」と説明。また、「戦力外の選手には金額提示はしない」と来季の構想外ではなかったことを強調した。
井端ショックから一夜明けた5日、12球団のトップを切って中日の契約更改交渉がスタートした。従来は若手選手から始め、主力は最後に行うのが球界の慣例だが、落合GMの発案で初日から主力が登場した。
井端同様、今季、不振だった荒木雅博内野手(36)は1億7000万円から、減額制限ギリギリの40%ダウンの1億200万円でサイン。
2勝36セーブ、防御率1.86で、昨季以上の成績を残した守護神・岩瀬仁紀投手(38)は、3億7000万円の現状維持だった。
翌6日も、主力が続々登場。主砲の和田一浩外野手(41)は142試合に出場、打率.275、18本塁打、76打点で、まずまずの成績だったが、3億3000万円から24.2%減の2億5000万円でサイン。
右ヒジの故障のため、わずか1勝に終わったエース・吉見一起投手(29)は2億9000万円から、減額制限ギリギリの40%ダウンの1億7400万円で白旗を掲げた。
右肩の故障で、前半戦をほとんど棒に振り、34試合の登板にとどまった中継ぎエースの浅尾拓也投手(29)は2億2000万円から、25%ダウンの1億6500万円となった。
また、通算218勝の大ベテラン、山本昌投手(48)は今季5勝を挙げたが、それでも、6000万円から減額制限を超える33.3%ダウンで、若手並みの4000万円で更改。
FA権行使も考えられた森野将彦内野手(35)は、2年契約で現状維持の1億7000万円でサインした。
2日間を通じて、主力選手は軒並み大幅減で、岩瀬と森野のみ現状維持という厳しい査定となってしまった。
中日の観客動員数は11年から3年連続で減少。13年は95年以来、18年ぶりに200万人を割り込んだ。その一方で、13年の中日の日本人選手の平均年俸は5198万円、年俸総額は31億7080万円で、いずれも巨人に次いで、球界2位だった。
チーム成績もさることながら、年俸が高くて、観客動員は悪いという悪循環に陥っていた中日。そのためには、ドライな大減俸を断行する必要があったのだ。
04〜11年まで8年間、監督として指揮を執り、4度のリーグ制覇を成し遂げた落合GMに逆らう選手は、退団した井端以外には、さすがにおらず、2日間で全17選手が一発サインした。
12年ぶりのBクラス、非情に徹した落合氏のGMとしての復帰で、中日ナインにとっては、まさに厳冬更改となってしまったようだ。
※金額はすべて推定
(落合一郎)