荒れた投球内容のように、凱旋登板を終えた松坂は決して穏やかではなかった。
悪いクセがプレーボール直後から出てしまった。不安定なコントロールに悪戦苦闘。ストライクを取りに行った初球を狙い撃ちされて本塁打を浴びたかと思えば、ボール先行でランナーを溜めて追加点を許した。「立ち上がり慎重過ぎた。最初からもっと攻めていければ」。昨シーズンから課題だった「立ち上がりの悪さ」は克服できないままだった。
なかなかストライクが奪えず、2回までに約100球目安の投球制限の半分を超える60球を投じてしまった。「本当はできるだけ長いイニングを投げたかった」。そう後悔しても後の祭り。とはいえ、立ち上がりこそ苦しいピッチングを強いられたものの、その後はガラリ一変した。
降板後の6回に味方の援護射撃により、一時は勝ち投手の権利を得るところまでいったが、その後にチームが逆転を許し、結局のところ勝ち負けはつかなかった。徐々にガマンのピッチングが実を結んできていただけに、交代後の松坂はブンむくれた。納得できず監督に「嫌だ」とゴネてみせたりもした。
あくまで気丈にふるまってみせた松坂だが、確実にイライラしていた。試合後は控え室の通路に待ち受けていた日本テレビの某アナウンサーに向かって「お前のせいで負けた」と言いがかり。周囲に報道陣がいたせいか少しおどけていたものの、某マスコミ関係者によれば松坂の捨てゼリフはまんざら冗談でもないという。
「あのアナウンサーは今開幕戦前のインタビュー取材で元球児だからってちょっと出すぎた発言して、松坂はムッとしたように思えた。まあ、その光景を見てた元メジャーリーガーで解説の長谷川滋利さんはオレなら怒るって言ってたし」。つまり松坂が恨んでいてもおかしくないという。
凱旋登板は空回りしてしまった松坂。その原因を「緊張」としているが、球団関係者の見解は違う。「ダイスケがチェンジアップを投げたい場面でバリテックがストレートを要求した。あのふたりは互いにどこか遠慮がちだった」
キャプテンで“女房役”のキャッチャー、バリテックとの連携に不安があるというだ。確かに、松坂は3回にバリテックのサインに首を振り、そこから自らのリズムを取り戻していっただけに、この先のシリーズでは2人の関係性も改善点の一つとなってくるといえる。
凱旋勝利を取りこぼしてしまった松坂。2年目の飛躍に向けて前途多難な開幕戦となったが、今シーズンは一体どんな活躍を見せるのか、怪物からますます目が離せない。