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書評「人間椅子」江戸川乱歩著、角川書店

 怪奇、フェティシズム、グロテスク…。日本推理小説の祖として名高い江戸川乱歩を表すキーワードは、ほぼ無限に存在する。

 「怪人二十面相」などの傑作で有名な乱歩だが、短編にも名作は多い。
 外務省書記官の夫と壮大な洋館に住む佳子は、美しい作家としても知られていた。書斎にこもり執筆活動を続ける佳子のもとに、突然ある男から一通の奇妙な手紙が届く。
 その手紙は、男が貧しい椅子職人であり、世にも醜い容姿のせいで、とてもあなたの前に顔を見せることはできないという文章から始まっていた。読み進めてみると、自ら作った椅子の中に入り、いいしれぬ喜びに包まれている男の告白文だった。そしてその椅子は今、立派な洋館の女性の腰の下にあるという…!
 椅子の中に隠れ、皮一枚を隔てて女体を抱く感触に溺れる男の偏執的な愛を描く表題作のほか、乱歩の傑作がつまった短編集。乱歩ファンより、乱歩を読んだことのない人に薦めたい。(税別514円)

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