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事件法廷「実母殺害事件の闇」(下)

 ささいな母娘の言い争いが殺人に発展した「実母殺害事件」で被告A子(48)は母親(84)への殺意を否認した。弁護人は精神科への通院歴を基に限定責任能力を主張し、殺意と責任能力があったとする検察側と真っ向から対立した。

 思春期のA子は恵まれた環境にあった。両親は高齢で授かった一人娘をだれはばかることなくかわいがった。都内の有名私立女子中高を卒業した後は系列の短大に進み、某大学病院の研究室で働き始めた。両親の期待通りに成長した。
 しかし、27歳のときに父親が急死してから生活が一変する。母親との2人暮らしが始まると、精神科に通院するようになった。子宮筋腫を患って子どもを生めない体になった。仕事をしなくなり、月20万円ほどの生活保護を頼りに暮らすようになった。気がつけば48歳。自宅アパートで母親と、ツケ払いのきく中華店からとった出前のチャーハンを食べていた。言い争いのあとには晩ごはん用の2人前の焼きそばと、母親の遺体が残った。
 殺意についての供述は二転三転した。当初は「気が付いたらベルトで母の首を絞めていた」と述べていたが、後に「ベルトの両端を握って最後に強く引っ張ったことを思い出した」と変えた。捜査段階ではベルトで首を絞めたこと自体を「憶えていない」としている。
 責任能力の有無についても一悶着あった。検察側が用意した精神鑑定人は責任能力は認められると判断。A子は不満げな表情を浮かべた。犯行状況を一部聞き取りしたとする鑑定人に対し「全くなかった」と反論した。新鑑定人を求めたが、東京地裁は却下した。
 検察側は「刑事責任を軽くしようと嘘の供述をしている。真面目な反省の態度が見られない」などとして懲役15年を求刑した。

 事件現場となった自宅アパートには小・中学校が隣接している。A子は「とにかくあのアパートは嫌だった」と繰り返し述べた。子宮摘出で子どもを生めない体になったA子には、その環境が耐えられなかったのか。犯行直前に母親が漏らした「子どもがいれば…」の言葉に、A子は「言ってはならないことを口にした」ときっぱり言い切った。
 判決は28日に言い渡される。

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