白昼のアキバ上空に巨大な球体が飛来した。目撃者によると、上空が一瞬暗くなったあとすぐ、爆発音のような物凄い音が響き渡ったという。
「駅改札口を出た瞬間、『ガガガーン!』と耳をつんざく轟音に襲われました。女性の悲鳴や『逃げろーっ』などと怒号が飛び交う中、空を見上げている人々の視線を追うと信じられない光景があったんです。駅前のラジオ会館に巨大な鉄球のような物体が突き刺さっていて…、それから先のことはよく覚えていないんです。ラジオ会館内のフィギュア専門店に行こうとしていた矢先だったので、足がすくんでしまって…」(20代男子学生)
週2〜3回はアキバに通うこの男子学生は、数分後、我に返ってフィギュア収集を趣味とする仲間に安否確認の電話をかけまくった。「いまも連絡がつかない仲間がいるんです」と表情を曇らせた。
秋葉原地区の家電量販店を担当する大手パソコンメーカーの営業マン(31)は商談の真っ最中だった。衝撃でテーブルの上のコーヒーがこぼれ、何事かと窓ぎわに駆け寄った。
「商談相手の売り場責任者がすぐ『地震だ。これ大きいぞ』と言ったけど、直感で違うんじゃないかと思った。下から突き上げるような衝撃が1回あっただけで、地震特有の余震を感じなかったわけ。でも、さすがに人工衛星が衝突したなんて思わなかった」
衝突箇所からはしばらく破片が降り注ぎ、ビルから外に飛び出そうとする人を懸命に食いとめる集団が見えたという。
現場はJR秋葉原駅電気街口を出てすぐの8階建て商業ビル。同館はホームページで「オーディオ、パソコン、フィギュアの聖地」と謳い、ヲタクのハートを鷲づかみにする大小さまざまな趣味・ホビー系専門ショップが入居する。
休憩時間を利用して同館に買い物に行く途中、衝突の瞬間を目撃したというメイドカフェの女性従業員(19)は「悪い夢を見ているようでした。なんでこんなことが起こるのか分からないから、頭の中がパニくっちゃって…。ヒザがぶるぶる震えてしばらく止まりませんでした」と声を振り絞るように証言した。
同館前の駅前広場は、ひところには週末になると販促チラシを配布するメイドさんであふれ、カメコ(カメラ小僧)の集合場所だった。いわば秋葉原の象徴的なスポットといっていい。人工衛星はどうして突如衝突したのか? なぜ秋葉原だったのか? “事件”の背景には何が隠されているのか? すべての真相は「STEINS;GATE」徹底解剖に。
◎秋葉原ラジオ会館
ヲタク系の各ジャンル専門店が集結するショッピングセンター。1962年に開業。橋幸夫&吉永小百合の「いつでも夢を」や中尾ミエの「可愛いベイビー」など希望にあふれる楽曲がヒットした高度経済成長期の真っただ中、電気街のシンボリックなビルは産声を上げた。増改築を経て、現在は1階にアキバ土産を扱うホビーショップが入居。2階より上階には、複数のフィギュア専門店のほか防犯ショップや収集用カード専門店、模型店、大型書店など。8階の貸しホールではイベントなどが開催される。
※本日は特別紙面建て。事件・登場人物はすべてフィクションです。