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コンピューターゲームの20世紀 第22回…『serial experiments lain』

<PSのレアゲーム>
 レトロゲームは時に定価以上の価格で取引されることがある。今回取り上げる『serial experiments lain』。数あるPSソフトの中でも1、2を争うほどの高値を誇る。
 発売から数年間は普通に定価以下の価格でショップに並んでいたと記憶しているのだが、気がつけば価格が高騰。筆者はアニメ版の影響で発売後間もなく購入したので事なきを得たが、当時は価格が高騰するなどとは露ほどにも思わなかった。
 ゲーム内でやれることといえば、ネットワーク上に散らばった音声データやムービーデータの断片を集めるだけ。それを自分の頭の中で再構築し、自分なりの解釈を見出す…というのがゲームの内容である。しかしこれははたしてゲームなのだろうか。当然の疑問である。が、プレイするうち、この世界のこと、登場人物たちのことがもっと知りたいと、気がつけばデータ集めに躍起になっている自分がいた。
 ただ、相当に人を選ぶ作品ではあることは間違いないし、加えて操作性(というかレスポンス)も非常に悪いので、購入を考えている人はくれぐれも慎重に。いつかアーカイス配信されるといいのだが、内容的にかなり厳しいと思われる。

<得体の知れない恐怖との戦い>
 主人公は岩倉玲音(いわくられいん)という名の内向的な少女。彼女は幻聴・幻覚に悩まされており、新人カウンセラー・柊子の下でカウンセリングを受けることになる。しかし時が経つにつれ、その立場は次第に逆転していくこととなり…。
 これからプレイする人のために詳細はなるべく控えるが(一部ネタバレ注意)、このゲームは最初から最後まで非常に重苦しい雰囲気でゲームが進行していく(終盤に近づくほどキツくなる)。膨大な数の音声データやムービーは、とてもPSとは思えないほどにエグい…というと的確ではないが、個人的に終盤部分に該当する音声データはもう二度と再生したくない。
 アニメ版も1人で観るのはかなりしんどい内容だったが、ゲーム版はそれよりも遥かに狂気じみており、プレイ中はひたすら悲しげなオルゴールの音色が流れ続け、とにかく気が滅入る。そんな危険な精神状態の中で新たに見つけたデータには柊子の精神が崩壊していく様や、玲音が自分自身を傷つけてしまうムービーなど、追い討ちをかける内容が盛りだくさん(一方で、そんな玲音が愛おしくもある)。そしてあまりにも救われないエンディング…。さらに周回プレイでは…。
 決してホラーを前面に押し出した作品ではないのだが(突如として死体の画像が挿入されるなど、その側面も持ち合わせてはいるが)、これほど怖い作品はほかにないと思っている。
 正直言って(好きなゲームだけど)トラウマ。今回この原稿を書くために久々に引っ張り出してみたが、相変わらず、玲音や柊子よりも私が先に参ってしまいそうになった。精神状態が不安定な方がプレイするのは非常に危険ですのでどうかご注意を。冗談ではなく本気です。「たかがゲームでなにを…」などと甘くみないように…。(内田@ゲイム脳)

DATA
発売日…1998年11月26日
メーカー…パイオニアLDC
ハード…プレイステーション
ジャンル…アタッチメントソフトウェア

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