ハイレグのコスチュームをまとったレイヤーに数人のカメコが群がっていた。胸の谷間がのぞくポーズを取ると、あっという間にカメコの輪が広がった。「こっちお願いします!」と次々に目線を求める掛け声。ここでほぼ間違いなく“邪魔”が入る。
「カウントダウンしま〜す。10、9、8…」
「ゼロ」と同時に全員撮影を打ち切り、即解散するのがコミケの内部ルールだ。カメコの黒だかりを見つけたらすぐスタッフが飛んできてカウントダウンを始める。写真撮影が認められているのは会場内の限られたエリアだけ。それでもなお、こうした自主規制を設けざるを得ない。
「声もかけずにパシャパシャ撮るカメコがいるんですよ。『振り向いてください』と言うならまだしも、勝手に後ろに回って撮るのは盗撮じゃないですか! おとなしいコは文句言えないだろうし…。胸の谷間を撮っても別にいいんですよ。ただ、隠れて撮るなってこと」(事情通の美女レイヤー)
自主規制が過剰すぎると思っていたが、実際にレイヤーの声を聞いてなるほど納得。コミックマーケット準備委員会には「きわどいポーズを要求された」「大勢のカメラマンに囲まれた」などのクレームが寄せられているという。
こうした経緯から、同委は撮影目的の来場者向け冊子で「コミックマーケットは撮影会ではありません。また、コスプレをしている参加者はモデルではないのです」などと注意喚起している。相手の承諾を得てから撮影するのはもちろんのこと、レイヤーを長時間拘束する撮影やポーズの強要もNG。悪質と判断すれば退場させることもある。
会場でカメコを観察してみると、股間に向けてローアングルからシャッターを切る連中や、脇下から胸元を狙うような輩が確かにいた。
しかし、そんな“エロショット”も画像を確認すれば不発に終わったとわかるはず。コスプレ歴12年のレイヤーは「実は下にタイツとかをいっぱい着ているんで、見た目よりも露出はそんなにない。事前にチェックを受けていますから」と話す。レイヤー側もまた“挑発”しないよう服装チェックを受けなければ参加できないという。
「チェックは結構うるさいですよ。たとえば、下着はヌーブラはOKだけどニプレスは不可。下着は絶対に付けてその上に水着。女性スタッフから『そのブラカップの下は?』とツッコまれたら見せないといけないんです」と前出の事情通レイヤー。
パイチラ防止にとどまらず、下着が透けるコスプレもダメ。レイヤーをかがませて胸チラがないか確認したり、「汗で濡れてきたらコレ透けるかも」などと、かなり細かく“指導”が入るそうだ。
コスプレでの来場禁止は知っていたが、レイヤー側にもこんなに厳しいルールがあったとは…。まさに汗と涙の青春のコスプレなのであった。(高)