高倉純平(香取慎吾)は柳沢春菜(黒木メイサ)と矢代英彦(藤木直人)の幸せを考えて春菜と別れる。純平は春菜からの電話に出ず、訪れてきても追い返してしまう。前回のラストは春菜と矢代の幸せを優先するアドバイザーとしてカッコ良さを見せたが、今回は自分の気持ちを我慢して無理する姿が痛々しい。相思相愛のカップルなのだから、互いに正直な気持ちになればハッピーエンドである。ところが、変なところで遠慮して気を遣うために上手くいかない。簡単に結ばれたならばドラマが成立しないため、すれ違いは恋愛ドラマのお約束であるが、じれったくもある。この点は登場人物が周囲を気遣って本音を押し殺す日本ドラマよりも、ストレートに感情をぶつけてテンポの良い口喧嘩が楽しめる韓国ドラマの人気が高まった要因である。
『幸せになろうよ』も主人公カップルは「お互いに気を遣って、自分の気持ちを押さえつけて。何なのですか二人して」(桜木まりかの台詞)という面倒臭い存在である。それでも『幸せになろうよ』がイライラだけで終わらない点は、脇役に遠慮がないためである。桜木まりか(仲里依紗)や上野隆雄(綾部祐二)はストレートに斬り込んでくる。それは主人公カップルにもどかしさを感じる視聴者の気持ちを代弁している。
まりかは純平に片想いを寄せる同僚であり、上野は学生時代からの友人である。二人が純平にズケズケと発言することは、それほど不自然ではない。ところが、『幸せになろうよ』のユニークな点は結婚相談所会員の小松原進(大倉孝二)も純平に斬り込ませたことである。
小松原は春菜と別れた純平を励まそうとして、純平の自宅で一緒に酒を飲む。会員と担当アドバイザーという関係で、失恋したアドバイザーを励まし、一緒に酒を飲み、下の名前で呼び合うことは必ずしも自然ではない。ドラマならではの人間関係であり、現実では中々なさそうな関係がドラマを盛り上げる。
小松原は女性に免疫がなく、女性と話すことすら上手くできない。結婚相談所で売れ残る変人という色物的な存在である。当然のコミカルに演じることが求められるが、他の登場人物が普通に演じる中では、小松原の演技が浮いてしまう危険性がある。しかし、小松原演じる大倉孝二は舞台出身だけあって、笑いを取るためのオーバーな演技でも決して場から浮き上がらない。大倉の演技によって小松原は応援したくなる好人物になっている。
その小松原に今回は素敵な出会いが訪れる。
次回は最終話である。主人公カップルの行方だけでなく、ドラマの舞台である結婚相談所の会員代表である小松原が幸せをつかめるかにも注目である。
(林田力)