就任2年目の今季は球団ワーストの13連敗も喫した。その後反撃に転じ、クライマックスシリーズ進出を争うまで持ち直している。3年契約の途中であり、普通に考えれば『続投』だろう。また、ドロ沼の連敗中も複数の球団幹部が「辞めさせない」と言っていた。記者団が執拗に続投を確認した理由は、いくつかある。まず、来季のチーム構想だ。
「広島、DeNAは生え抜きの野手がチームの主軸に成長しましたが、巨人は阿部、村田、長野、マギー。年齢的に上積みは期待できません。坂本もこの12月で29歳になります」(スポーツ紙記者)
一軍戦力となったニューフェイスは、捕手の宇佐見真吾と新人投手・畠世周くらい。期待の岡本和真は一軍定着すら果たしていない。ドラフト会議で即戦力投手の指名に失敗すれば、また外部補強ということになるだろう。昨年オフの大型補強にファンは否定的だった。それでも優勝できなかったのだから、来季は深刻なファン離れ(観客動員数の減少)も起こるかもしれない。『高橋体制』では未来が見えて来ないのだ。
プロ野球解説者が監督の契約任期について、こう指摘する。
「監督の契約年数なんて、あってないようなもの。事実、楽天の梨田監督も来年まで契約が残っているのに、三木谷オーナー、星野副会長が『まだ決める時期ではない』と“含みのある言い方”をするようになりました。独走態勢だった前半戦は名将と褒め称えられていたのに…。オリックスの福良監督、DeNAのラミレス監督は続投の確約をもらっていません」
「契約任期の途中」でも、成績が悪ければ解任。勝負の世界である以上、仕方ないことでもあるが、老川オーナーが執拗に囲まれたのは、前例があるからだという。近年の巨人には“途中解任”となったケースも少なくない。
前任の原辰徳監督も「途中解任」の屈辱を経験している。
第一次政権でのことだ。就任1年目で優勝、日本一を果たしたが、翌年は3位。3年契約でありながら、「人事異動」のひと言で、事実上のクビとなった。そのあとを引き継いだ堀内恒夫監督も3年契約だったが、2年目のオフでユニフォームを脱いだ。第一次・原−堀内−第二次・原、前任者2人が途中解任の憂き目にあったため、「高橋監督も例外ではない」という見方もされていたのだ。
「20代で主軸となる野手がまず出て来ないことには、来季も厳しい戦いになるでしょう。若手を我慢してでも起用するとなればいいんですが、巨人は優勝を義務づけられたチームですからね。勝敗にこだわれば、当然、安定感のあるベテランを使いたくなる。若手を使って活躍すればチームの起爆剤になりますが、失敗したときのリスクは計り知れない」(前出・同)
高橋監督の人柄を物語るエピソードが聞かれた。元選手によれば、現役当時は若手を食事に誘い出すことも多かったという。
「飲食店に入って、メニューを見ますよね。必ず口にするのは、『あっ、ちょっと待って』のセリフ。2、3分、メニューとにらめっこをして、最後は『みんなに任せるから』と言うんです。優しい先輩でしたが、優柔不断なところもあって…」
また、自主トレ期間中、大学の後輩にあたる阪神・伊藤隼太も『選手・高橋』を慕って帯同してきた。シーズン中はライバル同士になるのだが、『選手・高橋』は他の巨人選手が心配するくらい、アドバイスを送っていた。
こうした人柄に惹かれた巨人選手も多いという。巨人は2014年以降、優勝から遠ざかっている。同年はクライマックスシリーズで阪神に敗れる屈辱にも見舞われており、読売グループは「12年のシリーズ制覇」をチーム再建のゴールと捉えているそうだ。
優柔不断な高橋監督の背中を押せる参謀も必要だ。フロントも若手育成のための猶予期間を保証してやるべきだろう。