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森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★景気はリーマンショック前夜

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提供:週刊実話

 6月25日の衆議院で、野党5党が共同で提出した内閣不信任決議案は、与党などの反対多数で否決された。そして、安倍総理が不信任案に対して、解散権を行使することはなかった。

 私は直前まで、安倍総理が解散権を行使して、消費税増税を延期すると確信していた。安倍総理は消費税増税に関して、「リーマンショック並みの事態に陥らない限り消費税増税を予定通り実施する」と言い続けてきたからだ。

 いま世界は、まさにリーマンショック並みの経済危機に陥ろうとしている。リーマンショックの翌年から、世界経済は長期低迷に陥ったのだが、低迷の5年間の平均成長率は3.3%だった。そして、IMFの出している今年4月の世界経済見通しは3.3%で、まったく同じだ。しかも、IMFは、米中貿易戦争が激化すれば0.3%下押しすると言っている。

 一方、世界銀行は6月4日に、今年の世界経済見通しを下方修正して2.6%にした。すでに世界経済は、リーマンショックの時以上の不況に突入しているのだ。

 景気後退のシグナルは、マーケットにも現れている。米国の10年国債の利回りは、6月22日現在2.0%となっているが、昨年11月までは3%台だった。利回りの推移をみると、まさに坂道を転げ落ちるように下がってきている。経済の体力が落ちてきているのだ。また、米国の3カ月国債の利回りは2.1%だから、長短金利が逆転している。長短金利の逆転は、景気後退への明確なシグナルだ。

 実際、これまで短期金利の引き上げを積み重ねてきたFRB(連邦準備理事会)は、利下げへと方向転換することを示唆しており、市場関係者は、年内に2回利下げをするとみている。世界の国債利回りをみても、日本、ドイツ、スイスなどは国債の流通利回りがマイナスに転落している。これは明らかな異常事態だ。

 それでも米国株は上がっているではないか、という意見もあるだろう。確かにニューヨークダウは、6月21日に一時、過去最高値を更新している。しかし、それは経済実態の裏付けのあるものではない。金利低下で行き場を失った投機資金が米国株に向かって砂上の楼閣を作り上げているのだ。

 投機資金が逃避先を探しているのは、仮想通貨の相場にも現れている。一時期30万円台まで下落したビットコインは、120万円まで値を上げている。そのほかに、いま金や原油などの商品価格が軒並み上昇基調となっている。

 いまから11年前、同様のことが起きた。一本調子で上昇を続けた原油価格が、2008年7月11日、1バレル=147ドルの最高値をつけた。そして、そのわずか2カ月後に発生したのがリーマンショックだったのだ。

 こうした状況を考えれば、消費税の引き上げなどできる情勢では、まったくないことは明らかだ。だから、私は安倍総理が3度目の引き上げ延期を決断すると考えていたのだ。ところが残念ながら、そうはならなかった。

 ただこうなった以上、国民が採るべき対策は、まず株式や投資信託を持っている人は、いますぐ売りに出すこと。そして、就職や転職を考えている人は、できるだけ早く決めること。さらに不動産や耐久財は、買わないことだ。これから日本経済をデフレが襲うのは確実だからだ。

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