特に有名なのが、1980年代に多くの「衝撃映像」系番組で紹介されたカースタントマンの死亡事故「アラン・バンクス(Alnain Vincx)の悲劇」である。
俳優・スタントマンとして、全世界で名を馳せていたアラン・バンクスは、1987年5月29日オランダのとあるサーキットでカー・スタントの仕事を行っていた。アランは、連結したバスの中を車で突き抜けるという大変危険なカー・スタントのショーを行った。アランはヨーロッパの有名俳優のスタントなどを行っていた、ヨーロッパでも有名なスタントマンのひとりであり、関係者も家族も誰もがアランが失敗するとは思ってもみなかった。ところが、アランの乗った車は2台目のバスの中を突き抜ける途中に炎上し大破。アランは車の屋根ごと首を切断され即死してしまった。
この事故の一部始終は、ショーを見ていた観客、そして世界のテレビ局のカメラに収められることになり、日本のテレビでも「有名スタントマンの死」としてほぼノーカットで放送され、アランの死に直面できず泣き叫ぶ遺族の姿、そして首のないアランの遺体が全国のお茶の間に流れてしまっている。
もっとも、アランの死体は遠目からの撮影に留まっていたため、そこまでショッキングな映像ではなかったものの、現場の臨場感や遺体映像、そして、「アラン・バンクスよ永遠なれ」という重いナレーションは当時の少年・少女達に与えたトラウマは大きかったようで、今でも語り草となっている。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)