1987年11月15日、山形県鶴岡市で当時の市長、斎藤第六氏(故人・2000年逝去)の任期満了に伴い、鶴岡市の市長選が行われることになった。斎藤氏は70歳という高齢ながら3選目の出馬を表明。一方、対立候補は当時40歳の菅原丈男氏で、鶴岡市の将来がかかった一戦だった。
しかし、選挙を3日前に控えた11月12日、山形テレビ(テレビ朝日系列)で放送中のお昼のホームドラマ(「いまどきの姑」)にて、なんと現職の斎藤第六氏が「当選」というテロップが数秒間流れたのだ。
この市長選はもちろん八百長ではないし、そもそも投票日は3日後である。いったい何故、このようなハプニングが発生したのか。
山形テレビの説明によると、今回の選挙から導入した速報用のコンピュータを使いデータ送信のテストを行っていた所、誤作動が発生し放送中のテレビ画面に「斎藤第六氏当選」のテロップが流れてしまった、というわけだ。
選挙権を持っている世代が多く見ている時間帯での事故だったため、このテロップはすぐに立候補者の耳に入った。特に菅原氏側および菅原氏を公認している日本共産党山形県委員会はカンカンに怒り、「電波で誤った情報が流れるとイメージ回復は不可能」、また、公職選挙法にも抵触する恐れがあるとして「法的手続きを取る」とも山形テレビに警告し、テレビ局のトップが選挙管理委員会へ謝罪するまでの騒動となった。
山形テレビはこの日の夕方までに5回に渡り、お詫びテロップを放送したという。
なお、選挙は3日後の選挙は現職である斎藤第六氏が当選。皮肉にも誤報テロップと同じ結果となっている。
今のテレビ界でもときどき発生するテロップミス。笑って済むケースも少なくないが、市の将来を左右する選挙速報では決してあってはならない放送事故であった。
参照:読売新聞(1987年11月14日号)
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)