矢野燿大・二軍監督(49)がフェニックスリーグの行われている宮崎から緊急帰阪した(10月14日)。矢野二軍監督の昇格で決まると見ていいだろう。二軍監督に就任したのは今季、いきなりファーム日本一に導いた手腕はもちろんだが、二軍公式戦115試合で163盗塁という驚異的な機動力を見せ、得点効率も高めた。「その手腕を一軍で」の声が出てもおかしくはないのだが、矢野二軍監督が「考える時間がほしい」と返事を保留したのには理由がある。
「遅くとも今週中に返事をしてほしいと、フロントは思っています」(在阪記者)
指揮官不在は選手への影響も大きい。また、不在の期間が長くなるということは、球団の混乱を意味する。マイナス要素として報じられるのも人気商売としては宜しくないからだが、こんな指摘もある。
「ドラフトの1位指名選手を絞り込めません。現場の声を聞かないと…」(前出・同)
矢野二軍監督が帰阪する2日前、阪神はスカウト会議を開いている。チーム関係者によれば、阪神スカウトが作成した指名リストには80人強の選手名があり、1位候補は5、6人まで絞り込んだものの、そこから先の作業は停滞したままだという。
「野手がほしいのか、投手がほしいのか…。投手にしても将来性か、即戦力か、右か左で大きく違って来るので」(関係者)
11日には、甲子園を沸かせた金足農の吉田輝星投手との面談を行っている。「野手ナンバー1は根尾(昂=大阪桐蔭)」なる声も漏れ伝わってくるが、福留、糸井などレギュラー外野手の高齢化が進んでおり、「控え内野手も多い。根尾とポジションが重複する中堅、若手もいる」と、1位指名の絞り込みがいかに曖昧かを懸念する向きもないわけではない。
「今季の敗因を探れば、先発投手のコマ不足はなんとしてでも解消したい。でも、新しい監督が現有戦力でやれるというのなら、野手優先で最終的な絞り込みに入ります」(前出・同)
2011年、経営難に揺れていた旧横浜ベイスターズが監督不在でドラフト会議に臨んだこともあった。スカウトと現場で完全に線引きしている球団もあるが、近年の阪神は現場の意向を反映させた最終的な絞り込みを進めてきた。そう考えると、矢野二軍監督の返事保留は来季のチーム編成に大きな影響を与えてしまう。
こんな情報も交錯していた。金本監督が辞意表明の会見を開いたのは10月11日。その直前、矢野二軍監督を含め、全コーチスタッフに「辞めることになってしまった」と電話連絡を入れている。考えすぎかもしれないが、その言い方だと、 「辞めさせられた」とも聞こえるが…。
「前日10日の甲子園最終戦、金本監督は試合後に謝罪スピーチをしています。坂井信也オーナー(11月末退任予定)も観戦していましたが、そのスピーチを聞かずに席を立ち、クラブハウスで揚塩健治球団が金本監督を探すのが目撃されています」(前出・関係者)
会見で金本監督はBクラスが決定した10月5日から辞意を考え始めたと話していたが、その後、来季の一軍打撃コーチとして、元西武、中日の和田一浩氏の招聘や矢野二軍監督のヘッドコーチ昇格など「19年・金本体制」も発表されている。こうした球団の動きと金本監督の辞意は矛盾する。矢野二軍監督が返事を保留し、わざわざ帰阪してまで「考える時間がほしい」と言ったのは、こうしたチグハグな球団の動向の真意を探るためだったのかもしれない。(スポーツライター・飯山満)