強烈過ぎる先制パンチだった。
東京ラウンド開幕戦(3月5日、東京ドーム)に向け、最終メンバーの選考合宿が本格始動した。初日のこの日は、平日にもかかわらず大勢のファンが殺到し、幹線道路まで渋滞は続いた。
ウオーミングアップを終えると、野手、投手に分かれて練習。野手陣はシートノックやフリー打撃。投手陣はブルペンに入って調整した。
初日の練習を終えて指揮官は「28人の代表チームを作るうえで、宮崎は大きな通過点。いいスタートが切れた」と総括。各選手の仕上がり具合に納得のようで「予定通りにいけば、第2クールに試合。セレクションマッチではないが、結果としてそういう位置づけになるかもしれない」と21、22日に巨人との試合を“査定マッチ”にする方針を示した。
連覇へ着々と準備を進める原監督だが、その一方で、存在感はイチローに遅れを取っている。
練習では常に先頭を走り、守備では得意のレーザービームや背面キャッチを披露。スタンドにボールを投げ入れるなどファンからひと際、大きな声援を受けていた。
王貞治WBC相談役、評論家の清原和博氏らと談笑する場面も見られ、すべてにおいて際立っていた。
そんな人気抜群のスーパースターが監督に注文をつけた。「後半はだいぶダレていた。単純に(練習時間が)長いですね。人が集中できる時間っていうのは限りがある。見る方にとっても、やる方にとってもマイナス」。そればかりか「疲れちったですね。(疲れ)ちゃったまではいかないけど」とちゃめっ気タップリに言い放つなど、イチローの独演会状態だった。
イチローと原監督といえば、以前、イチローの発言をめぐりひと騒動あった。原監督が対談で「(イチローが)『オレは戦うぜ』と応えてくれた」と明かしたことに対し、イチローは「僕は『オレは戦うぜ』なんて言っていない」と否定したことがあった。
それだけに、今回の一件で再びイチローとの関係に亀裂が生じる可能性も否定できない。
巨人、WBCで外野守備走塁担当の緒方耕一コーチも「何をやっても(観客が)沸くね。ベースランニングもフリー(の練習)だったけど、イチローと川崎(宗則)が引っ張ってくれた」と大絶賛。イチローシンパは着実に増えつつある。
このままなら、原ジャパンがイチローに制圧されるのは時間の問題。連覇を目指す日本代表にとって一枚岩になることは必要不可決な要素だが、原監督にとっては今こそ正念場かもしれない。