『ニュージャパンカップ2019』
▽17日 東京・後楽園ホール 観衆 1,739人(札止め)
中身の濃い28分45秒だった。現時点では今年のニュージャパンカップのベストバウトかもしれない。
内藤哲也、EVILが敗退し、ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンでは唯一の2回戦進出者となったSANADA。対戦相手は、最近ロスインゴ勢に分が悪い鈴木軍のボス・鈴木みのる。みのるにとってもザック・セイバーJr.が準々決勝に進出しているが、このあたりで自身も結果を残して存在感と発言権を高めたいところ。みのるのセコンドはザックのマネージャー・TAKAみちのくが務めた。
両者は序盤から手足を取り合うテクニック合戦を披露。目まぐるしい展開に後楽園ホールに集まったファンの目が釘付けになった。力で劣るみのるは、スリーパーホールド、腕ひしぎ逆十字固め、ヒールホールドといった得意の関節技を駆使して、フィニッシュホールドのゴッチ式パイルドライバーを狙う。しかし、いつにも増して大きなSANADAコールが背中を押したのか、SANADAはこれらの関節技を何とかしのいでいく。場外戦ではみのるが主導権を握っていたが、壮絶なエルボー合戦でもSANADAが優位に立った。
試合終盤になるとSANADAが必殺技Skull Endを放ち、みのるがスリーパーや、足を取っての関節技で切り返すという展開に。両者とも何度も落ちかけたが、なかなか目が死なないのが遠目から見ても分かった。しかし、Skull Endでみのるの動きが止まった一瞬の隙を突いて、勝機と見たSANADAは自ら技を解きコーナー最上段へ。この日3度目のトライとなるラウンディング・ボディプレスが決まりカウント3。大激戦に場内の歓声はしばらく鳴りやまなかった。
「みなさんに伝えたいことがあります。実は…マディソン・スクエア・ガーデンが好きです。ただ、いちばん好きなのはここ後楽園ホールです。後楽園ホール!シー、ユー、ネクストタイム!」
新日本参戦以降、SANADAのマイク姿はメインで勝ったときにしか見られない。新日本の中でも“レア度”が高い。インタビューブースも素通りするのが基本なのだが、武藤敬司の弟子なだけに言葉もハッキリと発していた。決してできないわけではないのだろうが…。SANADAも内藤のように思っていることを口に出す日が来るだろう。
「イメージできるだろ?長岡の決勝で、メインに勝って、マイクを握る姿を…」
バックステージでも珍しくコメントを出したSANADAは、報道陣を通じて優勝を予言していた。この日、矢野通を破って準々決勝に駒を進めたROHのコルド・ガパナと、3.21アクトシティ浜松で準々決勝を戦う。SANADAにとっては得意なタイプの選手と思われるが、ROH勢最後の一人としては負けられない。地方のファンには、後楽園の熱を「イメージ」しながら今後の展開を見守ってもらいたい。
取材・文・写真 / どら増田