まず、現在はRIZINを主戦場にMMAファイターとして活動している実姉・山本美憂のコメントが笹原圭一広報から読み上げられた。「この度のことでみなさまにご心配をおかけしていますが、私、山本美憂は9月30日のRIZIN.13は予定通り出場いたします。もちろん勝って弟にいい報告をしたいと思いますので、応援よろしくお願いします!みなさま、たくさんのたくさんの励ましのメッセージをいただき、本当にありがとうございます!」と30日のアンディ・ウィンとのリベンジマッチには予定通り出場する意向を明らかにしている。
会見前に電話で美憂と話したという榊原委員長は「最後までリングに上がりたかった弟のためにも、当日は試合をして勝利を捧げたい」と話していたそうだ。
榊原委員長によるとRIZIN関係者は2年前から、KIDさんがガンに侵されていることを知っていたとのこと。「KIDはPRIDEでもRIZINでも試合はしていないので、K-1やHERO'S、UFCの選手というイメージがあるんですが、同じ格闘技界にいましたので、親交はありました」と話した。「再び格闘技界を盛り上げるためにRIZINを立ち上げた時、KIDにもUFCの契約が終わったら上がってほしいという話はしてました」と参戦交渉をしていたことを明かした。
ガンが発覚してからも「ガンを克服してRIZINで試合をしてほしい」とオファーをし続けたという。KIDさんは姉の美憂や甥のアーセンをRIZINに送り出し、30日に那須川天心と“世紀の一戦”を行う堀口恭司も育てた。他にもKIDさんから教えを受け、言葉をかけてもらった選手はRIZINにはたくさんいる。当初描いていたものとは違う形にはなったが、RIZINと関わりを深める形になった。
「追悼セレモニーなどは(実父の)郁榮さんと話を進めている。ベストな形でできたらいいと思ってます」と検討中であることを明らかにした。晩年のKIDさんに関して榊原委員長は「ホントにガンなの?と思うぐらい。痛みとか辛さとかをわれわれには見せなかったですね」と回顧。最後まで“格闘家山本KID徳郁”のイメージを壊さなかったと証言し、「日本の宝を失った」と早すぎる死を悼んだ。
30日の大会では「PRIDE以来の集客」が見込めるのは確実で、チケットはプレイガイドに若干数を残すのみ。PRIDE時代のスタジアム仕様ではなく、今回もアリーナ仕様となっているが、消防法の限界までチケットを販売しており、25,000人以上の動員は間違いないという。
榊原委員長は「PRIDE.10の前にアンディ・フグが亡くなって、あの日の西武ドームは凄まじい熱を生んだことを思い出します。今回の大会はあの時と同じような熱を生み出す雰囲気がある」と語る。当日はKIDさんの思いが天国まで届くような熱い大会になるはずだ。
取材・文・写真 / どら増田