大砂嵐はエジプト出身で、2011年に来日して相撲界入り。宗教上の問題を抱えていたものの、親方の理解もあって大嶽部屋に入門。翌2012年に初土俵を踏み、2013年7月場所から十両に昇進。11月には新入幕とスピード昇進を果たした。2014年には横綱の鶴竜、当時横綱だった日馬富士から2日連続で金星を奪っている。初の金星から2日連続で金星を挙げたのは史上初のことだった。しかし再び十両に降格すると伸び悩んだ。2017年1月場所で幕内に復帰するも、1場所限りで十両に降格。さらに幕下降格の危機もあったが何とか踏ん張った。
そして今年1月場所の最中に、自動車無免許運転による追突事故が報じられた。本人が「妻が運転していた」と当初虚偽の報告をしたこと、さらに週刊誌が女性問題を報じたことで、日本相撲協会から引退勧告を受けてしまい事実上の廃業に追い込まれてしまう。
大砂嵐は、3月31日にTBS系列で放送された『オールスター感謝祭』内の『ガチ相撲トーナメント』にサプライズゲストとして出場。ここで対戦した総合格闘家のジョシュ・バーネットが大砂嵐の身体能力の高さを絶賛し、バーネットがコーチ役を務める形で総合格闘家への転身とRIZIN参戦を目指してきた。
総合格闘技の経験もあり、現在、感染症などで闘病中の元横綱のプロレスラー、曙のもとを訪ねたことがきっかけで、曙が過去2度対戦して勝てなかった“野獣”ボブ・サップへの対戦を口にするようになった。
RIZINの榊原信行実行委員長は「当初は年末と考えていたが、ジョシュからの報告によると、(大砂嵐は)今まで相撲から来た選手の中では身体能力と潜在能力、適応力が一番すごいと聞いている。こういう選手は早く試合に出して、経験を積ませたほうがいい」と発言。7.29さいたま大会での参戦も匂わせていたが、サップ側との調整を重ねて、今大会での格闘家デビューとなった。
このカードは今大会の大テーマである「地上波の視聴率二桁」を目指すRIZINが世間に向けて発信するカードだ。このカードを発表すると、取材依頼が殺到。RIZINは取材申請の受け付けを既に締め切っていたが、急遽、若干数の追加申請の受け付けと、プレスルームの拡張をマスコミ関係者に伝えている。それだけ大砂嵐の格闘家デビューが世間に響いたということだろう。
同大会のチケットは、過去最速のスピードで売れており、RIZIN史上最高の観客動員を記録するのは確実な情勢。2万人の壁は突破できるのではないだろうか。これは那須川天心対堀口恭司という、今のRIZINが提供できる最高、最強のカードが持つインパクトが全国いや世界の格闘技ファンに響いた結果である。フジテレビ系列でゴールデンタイムに全国中継されることも決定した。天心はメディア露出も増えているだけに、このカードが世間にどこまで響いているのかは、視聴率に表れるはずだ。
今大会が今後の格闘技業界に大きな影響を及ぼす可能性が高いこともあり、他団体の関係者や選手の間からも「成功してほしい」という声をよく聞く。RIZIN9.30さいたま大会は格闘技業界にとっても勝負を懸けた大会であることを、RIZINは責任を持って証明してもらいたい。
写真 / ©️RIZIN FF
【どら増田のプロレス・格闘技aID vol.23】