堀口は今年5月のマリンメッセ福岡大会の試合後に、「キックルールでもいいからやろうよ」と天心にラブコールを送っており、天心も「やりたい選手」と、これを受け止めていた。RIZINは9月大会と大晦日の2大会で『RIZINキックトーナメント』を行う予定。両選手ともこのトーナメントにエントリーし、大晦日の決勝の舞台で対決するのでは?と思われていたのだが…。
高田延彦統括本部長は「どこでどんな負傷があるかわからないし、これが最初で最後になるかもしれない。お互いが最高な状態、フレッシュな状態で見たいと。そんな時に堀口くんから『トーナメントじゃなくていいんじゃないですか、僕は那須川くんとやりますよ』という言葉がありました。それを那須川サイドも快諾してくれて、トーナメントが吹っ飛んだんです」と今回のドリームマッチ実現の経緯を説明した。なお、キックトーナメントは大晦日の大会で開催するとのこと。
ルールについてはキックルールにする方向で、これから詳細を詰めていくようだ。榊原信行実行委員長は「これは立ち技の異種格闘技戦。堀口恭司選手はMMAファイターとして、那須川天心選手はキックボクサーとして闘う。いずれにしてもキックルールをベースに両陣営と話し合いたいと思います。これまでにもルールについては、いろいろありましたから。その経験を生かして、落としどころを見つけたいと思います。2人が真っ向勝負でできる環境を作れたら」と妥協点を見出していく姿勢を明らかにしている。
堀口サイドは「15分1本勝負」と提案している。試合形式は堀口のフィールドであるMMA寄りになる可能性が高いのではないだろうか。天心はいつものように「どんなルールでもOK」というスタンス。「強い選手と闘ってKOで勝つ」という天心の信条にブレはない。
両選手は“世紀の一戦”について「一つのミスが勝敗に関わる」とミスが命取りになると警戒している。お互いに秒殺ファイターであるだけに、一瞬たりとも見逃せない一戦になるのは間違いない。
今大会では「早くても大晦日」と言われていたミルコ・クロコップの復帰戦も決定。さらにまだ発表されていないが、元大相撲の大砂嵐がボブ・サップと対戦することも有力視されている。元K-1王者で、天心の首を狙っている大雅の参戦も決定。原口健飛とキックルールで対戦する。この試合は天心対堀口とともに「大晦日に開催するキックトーナメントの査定試合」となっている。榊原実行委員長は「われわれだけではなくファンのハートをどう射止めるかという査定になれば」と期待を込めている。
「『今年が勝負の年』だとみなさんにもお伝えしてきました。この3年間の歩み、RIZINで作り上げてきたものを感じられる大会にしたい。テーマは『温故知新』。これまでの歴史にリスペクトを払い、この3年間を未来につなげる大会にしたい。命がけで、全力でやります。日本の格闘技の素晴らしさを日本中に届けたいですし、それは世界にも届けていければと思っています」
われわれマスコミに対し、事前に『重大発表』と伝えていた今回の会見。カードを発表した高田統括本部長に続いてあいさつした榊原実行委員長の表情はいつにも増して硬かった。
榊原実行委員長は前回の会見で地上波の視聴率に危機感を抱いていることを明らかにしていた。今大会のラインナップを見ると、現時点でRIZINが提供できる限り最高のカードを惜しみなく出し切ってきたと言ってもいい。この本気度が高視聴率につながることを願うばかりだ。逆にこのカードで数字が取れないとなると、大晦日から来年以降の地上波との関係に影響が出てくる可能性もあるだろう。
今こそメイド・イン・ジャパンの格闘技の底力を見せつけてもらいたい。
取材・文・写真 / どら増田