なぜ出演することになったかというと、これにはちょっとしたエピソードがあって、この舞台の演出を担当しているのが、その昔、桑野信義のマネージャーをやっていた石橋という男なのだ。当時、オレは桑野とセットでテレビに出ることも多かったので、石橋と会う機会も多く、まだ業界に入ったばかりで慣れないことも多かった石橋にアドバイスしたり、励ましたりして、すごくかわいがっていた。
でも例の事件でオレは事務所をクビになってしまい、石橋もマネージャー業を辞めて演出の道に進んだ。それにオレが刑務所に入ってたこともあり、ずっと連絡を取っていなかったんだけど、なんと今年出した俺の著書「審判」のサイン会に石橋が来てくれたのだ。
そこであいつ、サインを待つ列に並びながらポロポロ泣いててね。「田代さんから昔頂いた“優しさ”は今でも忘れてません! あの時、田代さんの背中を見て学んだことが、今大変役に立ってます」って言ってくれたんだ。それにはオレもちょっとグッときちゃったよね。
それから「少しでも恩返しできれば…」ということで石橋の演出しているこの舞台へ誘ってくれたんだけど「あの時のお前の涙のお返しに出るよ、お金じゃ買えないものだから!」ということで、オレもふたつ返事でオッケーした。
ただ、いくら舞台に出るって言ってもゲスト出演なのでちょこっと顔を出すくらいかなー…と思ってたら、「田代さんが出てくれるんだから!」ということで、わざわざセリフも作ってくれたらしく、結構出番があるのだ。別にそこは気を遣ってくれなくてよかったのに。セリフ覚えるのが大変(笑)。でも、人に優しく接していると、それは自分にも必ず返ってくるんだなって改めて思えた出来事だった。舞台は「凛として…、〜天国は遠くの町〜」というタイトルで、新宿のSPACE107で10月28日〜11月1日まで公演しているのでお時間があったらぜひ見に来てください!