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巨人「反論レポート」よりも“大谷ロス” 「ポスティングシステムの対応策を話し合えなかった?」

 もっと時間を掛けて話し合わなければならない案件もあったのだが…。
 プロ野球の12球団実行委員会が開かれた(9月4日)。注目を集めたのは、巨人出席者による“反論”だった。同委員会に先駆け、選手会は山口俊投手に科された処分が重すぎるとし、再検討を求めてきた。今季終了までの出場停止、1億円強とされる罰金、そして、とくに強く抗議してきたとされるのが、入団に交わした契約年数の短縮についてである。
「B5用紙で5枚、ビッシリと『反論』が書き込まれていました。山口本人が納得しているということ、契約年数の短縮はFA制度そのものに影響を与えかねないというのが選手会の主張でしたが、巨人は『不祥事に対して』であるとして、真っ向から反論していました」(球界関係者)
 出席者の一人によれば、巨人の反論レポートは各球団が持ち帰り、異論があればNPBに連絡することになったそうだ。選手会、巨人のどちらの主張を支持するのか、結論は出していない。委員会後、熊崎勝彦コミッショナーは「現時点では処分が不当との意見はなかった」と語っており、このまま立ち消えになりそうだが、12球団出席者が本当に頭を抱えていたのは、同日、他に報告された別の問題だった。

 「埼玉西武の菊池雄星が繰り返し警告された『2段モーション』のこと、東京五輪の予選も兼ねた第2回プレミア12の準決勝、決勝が日本国内で開催されることなども報告されました」(前出・同)
 同日の“最重要案件”は、ポスティングシステムの改定交渉である。
「メジャーリーグ側との改定交渉について、その進捗具合が報告されました。まだ、意見交換の域を出ていないようですが」(ベテラン記者)
 現行のポスティングシステムでは、海外FA権の資格を得ていない選手がメジャーリーグに挑戦する場合、NPBのその選手が所属する球団に2000万ドル(約23億円)を上限とした譲渡金を設定。譲渡金を支払う意思のある全メジャー球団が対象選手と交渉できるルールになっている。
 同制度は改正の申し出がない限り、自動更新されることになっていたが、昨年、メジャーリーグ側が譲渡金の引き下げをメインとした改定を訴えてきた。

 先の関係者によれば、「現時点では具体的な内容は米球界側から出ていない」とのこと。しかし、キナ臭い雰囲気はすでに球場にも漂っているという。
「(8月)31日の日本ハム戦ですよ。メジャー14球団、22人のスカウトが大谷を視察しています。今オフ、『大谷は動く』と見るべきでしょう」(前出・ベテラン記者)
 同日の大谷は4回途中で降板。4失点で敗戦投手にもなっており、メジャースカウトもがっかりしたかもしれないが、22人もスカウトが大挙してきたのは異常だ。予告先発制とはいえ、ヤンキースは編成トップのブライアン・キャッシュマンGMも来日し、スピードガンまで持ち込む用意周到ぶりだった。
 日本ハム球団が「大谷はいつ投げるのか?」なるメジャー側の問い合わせに応じたというのが、周囲の一致した見方だ。

 米国人ライターがこう指摘する。
「編成トップがシーズン中に来日するのは、たしかに異例なことです。目的のひとつに、他メジャー球団への牽制もあったと思います。松井秀喜が巨人でプレーした最終年(02年)に、ヤンキースはジーン・アフターマンGM補佐が東京ドームを観戦し、同年11月の日米野球最終戦を、やはり、キャッシュマンGMが直接視察しています。編成トップを現地入りさせることで、他米球団に“本気度”を示しているんです。ヤンキースは資金力も豊富なので、マネーゲームになれば太刀打ちできませんからね」
 13年シーズンもGM補佐が楽天戦を直接観戦し、同年オフに田中将大との交渉を一気にまとめてみせた。

 そう言われてみれば、思い当たることがもう一つある。ポスティングシステムで発生する譲渡金に上限金が設けられたのは、13年だった。それまでは文字通りの「入札制度」であり、もっとも高い譲渡金を提示した米球団に30日間の独占交渉権が与えられていた。入札金の上限設定を訴えてきたのは、13年シーズン中。交渉窓口が複数球団に広げられた時期もあった。入札金の高騰、戦力の均衡など米球界側の言い分にも一理あるが、変更の度に有利になっていくのは、いつも米球界側だ。「メジャー志望の強いお目当ての選手が動くときに、ルール変更を求めてくる」とすれば、今回の改定の申し出にも合点が付く。
 日本ハムは“大谷ロス”を覚悟していたようだが、他11球団の考え方はちょっと違う。
今回の実行委員会では「山口問題」を蒸し返されたが、ポスティングシステムの日米協議に向け、対応策ももっと話し合っておきたかったようだ。

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