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どんなに夫婦関係が冷めても離婚できない? 財産分与の制度のせいで増える仮面夫婦

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 離婚したくても、財産分与の制度があるために離婚できないという人がいるようだ。民法親族第768条によると財産分与とは、協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。協議が決着しないとき当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求できる(離婚時から2年を経過したときはその限りではない)。請求した場合、家庭裁判所は分与をさせるべきかどうかや、分与の額や方法を定める。簡単に言えば、婚姻生活中に夫婦で築き上げた財産をその「貢献度」に応じて分配すると言ったところだろうか。

 財産分与の中でもメインとなる「清算的財産分与」は夫婦が婚姻中に積み上げた財産を清算することをさす。婚姻生活中の財産を分配するもので、離婚の原因を作った側の請求も認められるのだという。そのために離婚ができないという男性に話を聞いた。

 「自分は長年自営業を営んでいます。最初のうちは妻に苦労をかけたので、その点は感謝しています。しかし、事業が軌道に乗るにつれて、妻は専業主婦でも家事を一切せず、ネットで知り合った男と不倫するなど、あまりにも目に余る行動ばかりするようになりました。当然、離婚したいのですが、弁護士に相談したところ、妻に『不倫した』という『有責』があっても、自分が持っている財産はある程度分与しないといけないと言われました。妻に不倫の慰謝料を請求したところで、妻に支払い能力はありません。不倫相手はコロコロ変わるから特定できず、そちらに請求することもできないんです。妻はそれを分かった上で好き放題にしているようです。だから、実質泣き寝入りで婚姻生活を続けています」(40代・男性・自営業)

 このように、有責側の請求でも財産分与が認められるということは、非がないほうに財産があった場合に損をする可能性があるということだ。また、財産分与では、必ずしも「良い財産」だけを分与するわけではない。マイナスの財産(債務)、つまり借金も財産分与の対象となる。結婚前の借金や、婚姻後でも、自分のためだけにした借金は対象外。しかし、不足した生活費(衣食住の費用、医療費や子どもの教育費など)や家族のための車、住宅のローンは財産分与の対象となってしまう。それを夫に計算されて、離婚できなくなってしまった女性に話を聞いた。

 「夫が結婚してからいわゆる『モラハラ男』だと気づきました。離婚を求めましたが、夫は同意してくれませんでした。すると、夫が突然、マンションのローンを組んだんです。『これからは心を入れ替えるから、そのお詫びの形として』と。その言葉をうのみにしてしまった私が馬鹿でした。マンションに引っ越してしばらくすると、夫はそれまで以上にモラハラが激しくなりました。改めて離婚を切り出すと、『離婚したら住宅ローンはお前も払うことになるよ!おめでとう!』と…。夫に全てを仕組まれていたことに気づいたときは遅かったです。モラハラでは明確な証拠集めをしたとしても、すんなりとは離婚できません。今は離婚調停のための弁護士費用を払うために仕事を探していますが、それも夫に妨害されています」(30代・女性・主婦)

 中には、深刻な状況に陥っている人もいるようだ。財産分与は話し合い(協議)で取り決める。当事者間で話し合いがスムーズに行けば、ややこしい事態は避けることができるはずだ。しかし、離婚に相手が応じない場合、財産分与の話どころではないだろう。離婚調停、離婚審判、離婚訴訟といった裁判所の手続きを通して決めるとなると、どうしても弁護士費用はかかる。円満離婚できる夫婦だけではないのだから、離婚時の財産分与の制度は見直す必要があるのかもしれない。

文/浅利 水奈

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