林は、まずホワイトボードに出世の階段を描いた。南カリフォルニア大学教授の教育学者、ローレンス・J・ピーター氏が提唱した『ピーターの法則』という社会学の法則を図解入りで解説。セールスマンが出世の階段を上がっていく場合、売り上げが良いと“主任”となり、さらに出世して“地区長”になっていくと仮定する。しかし、営業する能力と管理する能力は異なるため、地区長の段階で“お手上げ”状態になることがあり得る。世界中の企業でこうしたことが普遍的に起きており「世の中の管理職というものはそこから上にいくことができない、そこで能力がないことを露呈した人たちの集まり」と世の企業を形容した。また、林はこれをスポーツの世界に置き換えて「素晴らしいプロ野球選手が現役を退いて監督になり、実績を作ることができず辞任に至る状況と同じ」と補足した。
さらに林は『ピーターの法則』とは別の視点を披露した。能力のない上司は“自分を脅かす有能な部下”を昇進させず、結果的に「無能な人ほど出世するという話にもなる」と持論を展開。“出る杭は打たれる”という日本的な要素も出世に影響を与えているとした。
ネット上には、「無能ってか世渡り上手が出世するよね。仕事とは関係ないところで出世するから結果無能ってことになるんだと思う」「実際オレも主任になって思ったけど、人まとめるのは苦手…やる気も出ないし無能だって思うわ」「今の時代って有能な人は起業したりもするしな。会社に残って能力限界までやるのが無能って言われたら無能になるんだろうね」など、林に賛同する声もあった。
しかし、その一方で林に反論する声も寄せられている。「組織って言っても規模次第でピンキリだよ、大手だったらトレーニング期間もあるわけだし」「会社によるのかな? うちの場合は一番優秀だと思ってた人がどんどん昇進していったけどね」「林先生の言うことは短絡的だね。組織の中だと男女の差とかもっと出世できない複雑な問題があるよ」などの意見もあった。
実際に正当に評価されず、出世を阻まれた例は世の中に多くあるのだろう。2009年4月の『日経ビジネスオンライン』で、組織における昇進のリアルな実情が紹介されている。ある会社の役員に昇進試験の現状について取材したところ、「先日も男女1人ずつ昇進試験を受けたんだけど、女性の方が少し成績は良かった。ところが昇進したのは男性」と明かしたという。女性を昇進させなかった理由は2つ。1つは、昇進できない場合、女性よりも男性にとって悪影響が大きいと考えた、というもの。もう1つは、その女性がすでに結婚や出産といった“女としての幸せ”を掴んでいたため、「1回だけ我慢してもらおう」と判断した、という信じがたい内容だった。つまり、男性のプライドを男性上司が守ろうとし、女性の昇進が見送られたということだろう。
また性別に関係なく、会社から正当に評価されていないと感じる人は少なくないようだ。林の紹介した『ピーターの法則』の状態に陥らないよう会社側の改善も求められるのだろう。