世界新を逃した北島は控えめにガッツポーズした。インタビューでは「記録が出なくてちょっと悔しいですけど、優勝できたことは本当に感謝しています。自分ひとりではここまでこられなかった。みなさんと、この喜びを分かち合えて嬉しいです」と感謝の言葉を繰り返した。17日のメドレーリレーを最後に引退する意向も漏らした。
これぞ北島。ストレートな感情表現と自然体には誰しも好感を持つところだ。しかし、これだけの快挙を成し遂げながら金メダル2つの対価は低すぎる。人ごとながらブータレたくなるが、五輪後は“金量産”が約束されているという。
ありとあらゆる企業CMの分析・調査を手がけるCM総合研究所の関根建男代表(68)は「北島選手に反感を持つ人はほとんどいない。CM界では老若男女すべてにアピールする数十年ぶりのビッグスターで、広告効果は計り知れません。控えめにみてもCM1本1億円の超Aクラス入り。もっと跳ね上がってもおかしくない」と指摘する。
これまで超Aクラスには、米大リーグ・マリナーズのイチロー外野手(34)とタレントの木村拓哉(35)、女優吉永小百合(63)の3人しか存在しなかった。
北島はアテネ五輪の2冠で1本数千万円のAクラス入りを果たしたが、その後の成績が芳しくなく、競技に集中するためCM出演を絞ったこともあってやや価値が落ちた。それが100mの涙の金メダルに続き、この日2つ目の金メダルを獲得したことで再び急上昇に転じた。トップ4の仲間入りは確実という。
関根代表は「スポーツ選手では清原選手や松井秀喜選手を抜き去った。五輪2大会の実績もさることながら、泳ぐ姿やゴール後のポーズ、プールサイドでのコメントなどすべてに迫力と説得力がある。水泳選手にはきわめて珍しく、CM効果が見込める対象商品や客層の壁さえもぶち破った。秋以降は出演依頼がガーンとくるはずです」と予測する。
北島は現在、所属する日本コカ・コーラのほか、水着契約するミズノやエステのTBC、ロッテなどと契約を結んでいる。それが飲料、食品はもちろん、金融・保険まで全業種が触手を伸ばす可能性が出てきたという。
「感動の余韻がしばらく残るので、1年ぐらいは水着CMでいい。CMを見た1万人に5人もその商品を購入すれば相当な効果がありますが、彼の場合は10〜20人じゃきかない。間違いなくCMはヒットしますから1億円でも企業には安い買い物ですよ」(関根代表)
同研究所は、小学1年生から89歳のおばあちゃんまで毎月全国3000人をモニター調査し、CM効果などを計測中。9月には北島がぐんぐん伸びるとみている。引退後は練習時間との調整の必要がなくなるため、業種を選ばなければ国内でトップに立つのは時間の問題だ。
世界を見渡せば、2005年に米ハリウッド女優スカーレット・ヨハンソン(23)が、世界最大の化粧品会社ロレアルと約4億4000万円でCM契約。06年には英マンチェスター・ユナイテッドが、米保険会社と4年約114億円(年28億円強)の大型スポンサー契約を結び、「史上最高額のユニホーム」と騒がれた。韓流スターのピ(26)は、数カ月の短期間に電子機器メーカーや飲料メーカーなど複数企業と集中契約し、約5億円を稼いでいる。
正式な史上最高額契約は不明だが、さすがに年40億円を超えれば世界新記録樹立だろう。北島の前にまた新たな壁が出現した?
○金メダルの値段
JOCの五輪メダリストへの報奨金は金300万円、銀200万円、銅100万円と決まっている。これに競技ごとの協会やスポンサーから上乗せされる。
たとえばアテネで金2銅1の北島には、金2つの600万円、銅100万円、日本水泳連盟から200万円、スポーツ振興助成金として240万円が贈られた。さらに都民栄誉賞の50万円を合わせて計1190万円。
ほかにも石原慎太郎都知事が「金メダルをとったら焼き肉を2年分おごる」と約束した。
しかし、公選法上の有権者への寄付行為にあたる可能性があるとして、なんらかの代案を検討するとした。それがいつどのようなかたちで実行されたかは、明らかにされていない。