昨季まで2年連続Bクラス。起死回生の打開策について、田邊徳雄監督(49)と編成の意見は一致していた。投手陣の補強。昨秋のドラフト会議で西武は10人を指名した(支配下登録)。それも、うち8人が投手。もっといえば、7人が社会人、大学生である(独立リーグも含む)。「投手陣を再整備すれば、勝てる。ソフトバンクの独走を阻止できる」と判断したからだろう。しかし、“即戦力”として指名したはずの新人投手たちのなかで、一軍で開幕を迎えた投手はゼロ。したがって、投手陣は「補強されていない」に等しい…。
西武が高山俊(阪神)、オコエ瑠偉(東北楽天)、高橋純平(ソフトバンク)でもなく、1位入札したのは、多和田真三郎(22=富士大)だった。他球団との競合・抽選を避けたのではない。ドラフト前日の鈴木葉留彦球団本部長のコメントが思い出される。
「この投手に関しては4年生時での判断というより、下級生(のころ)から見てきて、身体能力の高さがドラフト候補選手のなかで一番。1位で行くと決めた。エースナンバーをつけていい選手」
鈴木本部長の言う「この投手」とは、多和田のこと。西武スカウト陣が即戦力タイプの投手を直前まで調査していたため、メディアの「1位予想」は割れた。しかし、「多和田ですか?」と記者団に聞かれ、ハッキリそう答えたのだ。一昨年の高橋光成に続き、2年連続での『指名選手名の公表』だった。
これは西武の1位指名予想が割れた理由でもあるのだが、多和田は4年時に右肩腱板を炎症し、秋季リーグは投げていない。
「新人合同練習(1月)を見て、シーズン中盤以降に(一軍に)出てきてくれればと判断したようです。今季の開幕一軍に間に合わないと怪我の回復具合を予想する西武スカウトもいました」(球界関係者)
高橋光成も一軍デビューは8月だった。多和田にスロー調整を許したのは「将来性」を買ったからだろう。目先のことにとらわれないのが西武球団の長所でもあるが…。
先発ローテーションの関係で、第2節以降の先発予定投手を意図的に開幕メンバーから外すことはある。開幕戦登録の投手10人のうち、ニューフェイスは新外国人のアンディ・バンヘッケン(36)、C.C.リー(29)の外国人投手だけ…。パ・リーグ出身のプロ野球解説者が今後をこう予想する。
「開幕投手の菊池雄星、十亀、バンヘッケン、野上がローテーションを務めます。牧田の復帰は4月下旬か、GW中になりそう(3月20日時点)。救援は高橋朋と増田がカギ。高橋朋は昨季62試合に登板しており、彼一人に負担が集中する図式が変われば良いのですが…」
昨季216本の安打数を記録した秋山翔吾を1番バッターに置く打線は魅力的である。また、キャンプでは3年目の山川穂高(24)が打撃でアピールしていた。体重100?の巨漢で、出場は一塁か、指名打者に限られてくるが、森友哉(20)がオープン戦で不振だったため、「ひょっとしたら!?」と思っていたら、本当に開幕スタメンで出てきた(一塁)。
名前、人気ではなく、調子の良い者、努力した選手をきちんと評価できるのは、西武球団の素晴らしさでもある。
「西武のスタメンは中村剛、栗山、メヒア、浅村など好選手も多いが、選手層が薄い。怪我人が出たら、戦力ダウンは確実」(前出・プロ野球解説者)
牧田、背番号18・多和田が復帰するまで、西武は『打』で勝負することになりそうだ。蛇足になるが、『打』の山川は多和田と同じ富士大学の出身である。
※鈴木葉留彦球団本部長のコメントは共同通信等に掲載されたものを引用いたしました。