巨人、中日のエースだったからといって、もう最盛期を過ぎたオリオールズ・上原が年俸5億円、ブレーブス・川上は8億3000万円。日本球界からしたら、常識外のバブルだろう。「絶対に1年間もたない。故障持ちだから、パンクする」という巨人関係者の断言通りにケガで長期戦線離脱。復帰しても先発から中継ぎ転向予定の上原。それなりに奮闘はしているが、8億円プレーヤーとしては疑問符の川上。いずれも昨年、18勝したレッドソックス・松坂のおかげで日本球界のエースの相場が高騰したための高すぎる年俸だ。
ドジャース・野茂に始まり、マリナーズ・イチロー、ヤンキース・松井秀、そして直近のレッドソックス・松坂…と、日本球界を代表する日本人メジャーリーガーが大活躍すると、翌年にその御利益に預かる高すぎる年俸の選手が出て失敗している。
野茂の後にはヤクルトからポスティングでドジャース入団の石井一(現西武)がいる。野茂狂騒曲で日本のマスコミ、ファンが大挙してロサンゼルスに押しかけ、ジャパンマネーが転がり込んできたドジャースは、第二の野茂の期待をかけた。95年、野茂が1年契約で総額2億円といわれたが、石井一は4年契約、総額12億円と野茂超えの大金を手にしている。いきなり14勝はしたものの、ジャパンマネーはとらぬ狸の皮算用。ドジャースは石井一をすぐに放出している。
今季、アストロズで日米通算2000本安打を記録して話題になった松井稼もそうだ。ヤンキース・松井秀が大成功したために、同じニューヨークのライバル球団メッツが「リトル・マツイの成功も間違いない」と早合点。松井秀と同等の破格の待遇、3年契約、総額20億円以上の大金を支払った。結果は失敗で松井稼も放出されている。
カブス・福留にしても「イチローに長打力をプラスした選手」という過大評価で、もがき苦しんでいる。メジャー史上初の9年連続200本安打を目指しているイチローが大リーグ年俸ランク11位の18億円は分かるが、福留もなんと12億5000万円ももらっている。メジャーリーガーウオッチャーが、今後の日本人メジャーリーガー市場の変動をこう語る。
「さすがにメジャー球団側も、日本プロ野球界のスター選手を大金を積んで連れて来るデメリットの大きさに気づき始めた。年俸4000万円、総額でも数億円で、レッドソックスが新日本石油ENEOSの田沢を獲得、1年目からメジャー昇格するなどそれなりの成果を挙げたのに、他球団も注目している。甲子園で準決勝まで残った花巻東の菊池雄星に対して、メジャー数球団が徹底マークを始めている。アマ球界の逸材獲得の動きに拍車がかかるだろう。それと、日本よりも獲得費用が格段に安い台湾、韓国、中国のマーケットに力を入れ始めている」と。
ヤクルト・青木などのように、依然としてメジャー症候群の日本人選手は後を絶たないが、これまでと違って市場は甘くはない。日本人メジャーリーガー市場は急激に変化する。