まず、ボールを遠くに飛ばす力がある。脚力もある。昨季までは三塁を守ることもあったが、外野手としての守備範囲も広く、肩も強い。4番の李大浩が抜けた後、レギュラー候補の野手を補強しなかったのは、この塚田を使うためではないかとさえ思ってしまう。本当にこのチームは選手層が厚い。そして、練習熱心である。午前9時、ほとんどの球団はウォーミングアップを始めるころの時間帯だ。しかし、ホークスのキャンプ地・生目の杜運動公園野球場(アイビースタジアム)では、選手たちがすでに“ひと汗”かいていた。
選手が自主的に集まる早出特打ち練習が連日のように行われ、その打撃投手役は工藤公康監督が務めていた。球場スタッフによれば、午前9時半の時点で工藤監督は150球以上を投げたという。
まず、投手陣だが、二、三軍を意味するB組で松坂大輔が初日からブルペンに入った。約30球を投げ、さらに捕手を座らせて50球。西武時代を知るプロ野球解説者たちは「まだ投球フォームがおかしい」と言うが、昨季とは比べ物にならないほどボールは走っている。そのブルペン入りした初日、全選手が12分間走を課せられた。松坂はチーム2番に多い2600mを走ってみせた。体は出来ていると見ていいだろう。おそらく、ホークスの先発ローテーションは武田翔太、攝津正、昨季9勝無敗のバンデンハーク、移籍以来の2年間、先発ローテーションを守り続けた中田賢一までは確定だろう。残り2枠を岩嵜翔、東浜巨、千賀滉大、調整のためにB組スタートとなった寺原隼人、大隣憲司が争う図式。松坂の復活がシーズン中盤以降だとしても、戦力的な影響は全くない。また、ローテーション争いに、確実に加わってくると思われるのが和田毅だ。5季ぶりのチーム帰還。メジャーでは故障などもあって苦労したが、変化球を低めに集める制球力は健在だ。滑りやすいとされるメジャー公式球と縫い目の高いNPBのボールの違和感からか、ブルペンでは変化球の曲がり幅がイメージに行かないらしく、捕手に確認するシーンも見られた。とはいっても、微調整の範囲である。工藤監督はこのベテラン左腕を計算に入れているはずだ。
打撃陣だが、トリプルスリー・柳田悠岐が指名打者にまわるケースも出てくるという。理由はいくつかある。ひとつは昨季終盤に痛めた左膝の状況が芳しくなかった場合。もうひとつは中村晃、3年目の上林誠知、13年首位打者の長谷川勇也、福田秀平、カニザレスらとの兼ね合いだ。外野手だった内川聖一が“一塁固定”とのことで、これに柳田も“指名打者兼任”となり、外野の定位置争いがさらに過熱したわけだ。
二塁の定位置争いも激しい。昨季64試合セカンドを守った明石健志、ポジション再奪取を狙う本多雄一、川島慶三がいて、この3人のいずれが獲っても、走塁面で期待が持てる。だが、4年目の高田知季も軽快な動きをみせていた。昨季一軍に定着したこの高田をベンチに置いておくのはもったいないと思った。李大浩が抜けた穴は「ない」と言い切れる。工藤監督はレギュラー争いを激しくさせ、チームを活気づけていた。