注目は、アジア選手権での登板の有無だけではない。「進路問題」だ。
「当初の予定通り、お世話になっている八戸学院大へ進学するという見方もあれば、甲子園で自信を持ち、プロ入りに傾きつつあるとの声も聞かれました。甲子園大会後の全日本チームで他校選手と話をし、進路を一変させた選手は過去にもいましたが」(スポーツ紙記者)
昨年も「進学か、プロ入りか」で揺れていた清宮幸太郎が意思表示をしたのも、U−18大会後だった。プロ志望届の提出期日は9月21日、吉田が意思表示をするのは、早くても今大会決勝戦の行われる9日と目されている。しかし、プロ野球スカウトの評価は微妙に変わりつつあるという。甲子園大会では、トーナメントを勝ち上がるにつれて評価を高めたのは吉田だが、U−18アジア選手権のメンバーが招集され、全体練習や大学生との壮行・練習試合を重ねていくなかで聞かれたのは、「やっぱり、根尾(昂=大阪桐蔭・内野手)」の声だ。
「走攻守全てが揃っているとの評価は今さらだが、身体能力の高さ、野球センスを再認識させられました」(在京球団スカウト)
吉田のプロ入り表明が大前提だが、1位入札は根尾に集中しそうな雰囲気になってきた。こうした状況を指して、巨人の単独指名を予想する向きも出始めた。
「今年は高校生のアタリ年とも言われています。仮に吉田の指名が抽選となったとしても、将来性の高い選手が残っていそうなので、巨人は『冒険』してくるのでは」(前出・同)
巨人の今年のドラフト戦略だが、もともとは即戦力投手と高校生内野手を狙っていた。現先発ローテーションでまともに計算が立つのは菅野だけ。先発投手を補強しなければ、来季も広島に大敗してしまう。高校生内野手の指名は坂本勇人が元気なうちに後継者を育てておこうというものだ。
「即戦力投手を指名しなければならない年に高校生を指名するのだから、それなりのリスクを生じます。2位以下で社会人、大学生の好投手がどれだけ残っているのか…。かといって、吉田の指名から逃げたら日本中の野球ファンを敵に回してしまうでしょう」(前出・スポーツ紙記者)
吉田がプロ入りを表明すれば、東北の楽天イーグルスも目の色を変えてくる。巨人にとっては苦しい選択となりそうだが、こんな声も聞かれた。FA補強だ。今オフのFA市場で去就が注目される投手は、オリックスの西勇輝だ。実績のある西が動くとなれば、多くの球団が獲得を目指すが、巨人の狙いは西だけではない。
「阪神のメッセンジャーですよ。外国人選手が国内FA権を取得すると、外国人枠から外されます。ライバルの弱体化もあって一石二鳥です」(前出・関係者)
メッセンジャーは阪神一筋で日本の国内FA権を取得した。「タテジマ愛」も表明しているが、阪神以外の球団が好条件を提示すれば、「話は聞く」との情報も交錯している。
「メッセンジャーの推定年俸は3億5000万円。残留交渉のスタートラインは5億円と見られますが、来季38歳になる投手に大金を払えませんし、メッセンジャーとその代理人は複数年契約も強く希望しているとも聞いています」(在阪記者)
吉田の進路表明は、FA投手の去就まで変えてしまいそうだ。(スポーツライター・飯山満)