第12回U−18アジア選手権を戦うため、今夏の甲子園を沸かせた球児たちが立教大学との練習試合に臨んだ。「高校選抜チーム対大学生」、この試合は、12球団スカウトにとって格好の判断材料だったという。
「立教大もエースは投げさせませんが、代表チームに選ばれた高校球児たちがワンランク上の大学生と試合をやったらどうなるのか、ドラフトの判断材料になります」(在京球団スカウト)
しかも、高校球児たちはアジア選手権に備え、木製バットを使わなければならない。金属バットを使えなくなった瞬間に打てなくなる球児も過去にいた。ネット裏のスカウトたちはお目当ての指名候補に熱い視線を送っていた。
しかし、阪神スカウトだけは他球団と異なる動きを見せ始めた。今年は高校生のアタリ年とも称されるが、阪神は大学生、社会人の投手を1位指名するという。
この情報は意味深い。
「今の阪神の先発陣を見れば、当然でしょう。メッセンジャーは37歳、藤浪は不振に喘いでいます。秋山も勝ち星よりも負け数のほうが多いし」(在阪記者)
戦力的に見れば、「将来性の高校生よりも即戦力投手」という判断は間違っていない。だが、ドラフト戦略を切り換えた理由には、金本知憲監督とフロントとの関係も影響していた。
「ここ数年、阪神スカウトは即戦力投手を獲得しようとしていました。でも、金本監督がどうしてもと言って、野手の1位指名に切り換えていたんです」(球界関係者)
過去3年間、金本監督は現場スカウトの報告書を一変させていたとも言える。昨年は大学生投手を1位指名したが、入札は清宮幸太郎だった。その抽選に外れた結果、投手指名という動きになったのだ。
「阪神スカウトが社会人、大学生投手の1位指名をこの時期に匂わせてきたのは、他球団を牽制するためではありません。金本監督へのメッセージです。1位指名候補を一変させるような権限は、もうない、と…」(前出・同)
金本監督は大失敗だったロサリオ獲得にも一枚絡んでいる。映像チェックに関わっており、高山、大山が伸び悩んでいる状況にも責任がないとは言えない。ペナントレースも苦戦続きである以上、現場スカウトやフロントが“反旗を翻した”のは当然だろう。
こうしたドラフト情報から考えると、金本監督はこれまでのような権限こそ喪失したが、「来季も続投」ということのようだ。続投させる代わりに権限を喪失したという見方に関しては、否定的な見方もあるが…。
「でも、大阪桐蔭の藤原恭大外野手にご執心だとの情報も聞かれます。彼の打撃力は高校生のなかでもトップクラスですが、外野手なので他球団のスカウトは慎重です。糸井、福留の高齢化があり、高山が伸び悩んでいるので、阪神が将来のクリーンアップ候補の藤原に入れ込むのもわかりますが。他球団が藤原の1位指名に慎重なので、社会人、大学生投手を1位指名しても、2位で藤原が残っているという判断もされたのかもしれません」(前出・同)
夏の甲子園を制した大阪桐蔭には7人のドラフト候補がいるという。だが、彼らは先輩である藤浪晋太郎が伸び悩んでいる現状から、阪神にはさほど魅力を感じていないとの情報も駆け巡っている。阪神は金本監督から権限を奪い取ったとしても、ドラフトで的確な補強ができないかもしれない。(スポーツライター・飯山満)