「新井(貴浩)と鳥谷…」
坂克彦(26)の名前が出るのを期待しての質問だった。
坂は登録こそ内野手だが(各新聞社発行『選手名鑑』)、「外野手専任」でキャンプインした。非凡な打撃センスを持っているが、出場機会には恵まれてかった。走るのも「速い方」であり、坂の外野コンバートは今季の目玉でもあったのだが−−。
「坂は精力的に外野の守備練習をこなしてきたと思います。その頑張りに目を細めていた阪神OBも少なくありませんでした」(ライバル球団偵察隊の1人)
しかし、一部では「学生時代に逆上っても内野しかやったことがないのに」と批判的な声もあった。当然、「ブラゼル、平野、鳥谷、新井貴とレギュラー陣がほぼ固まっていて、関本、葛城らが控えている。この内野陣の競争に割って入るのは厳しい」と、好意的な意見も聞かれた。だが、さらに付け加えるならば、「どこでも守れる平野を外野守備に専念させれば済むこと」と“真弓構想”を完全否定する者もいた。
「マートンをライトにまわし、俊足タイプの選手にセンターをまもらせることで外野の守備能力を高めたいのでしょう」(球界関係者)
賛否両論だが、坂は精力的に外野守備の練習をこなしてきた。その坂の名前が真弓監督の口から出なかったのは驚きである。
「フェンスに直撃するかどうかという大飛球が行くと、オタオタしています。守備能力を期待してのコンバートなら、坂の外野専念案は失敗といわざるを得ない」(プロ野球解説者の1人)
一次キャンプを見た限りでは、センターの新レギュラーは藤川俊介(23=登録名は『俊介』)ではないだろうか。5年目の野原将志(22)も頑張ってはいたが、ベテランを脅かすような若手の頭角は見られなかった。
「若手の到来。これが、阪神OBの切実な願いであり、チームに勢いを与える最良の手段なんですが…。真弓監督もそのことは分かっていたから、坂を外野に挑戦させたんだと思います」(前出・プロ野球解説者)
新井、鳥谷の名前しか出なかったということは、『若手到来』の最重要課題を克服できなかったのも同然である。
昨季144試合出場で打率3割3厘の好成績を残した城島健司(34)が左ヒザの手術で出遅れるのは必至。ベテラン・金本知憲(42)の回復具合は未知数であり、ここに低反発の新統一球の影響も加味すれば、チーム打率2割9分という最強打線の破壊力は大幅にダウンするだろう。前千葉ロッテのクローザー・小林宏之を得たことで、最小得点差で逃げ切る態勢はできた。しかし、ベテランに頼りきった状況からは抜け出せていない。
ベテランの多いチームには、いくつかの傾向も見られる。スロースタート、故障者が多いこと…。21日、紅白戦で昨季終盤の救世主・秋山拓巳(19)が4番手で登板したが、2回被安打4、失点1。16日の練習試合(対西武)でも1回被安打3、失点2と結果を出していない。この紅白戦の結果を受けて、一軍昇格は見送られ、期待できそうな虎の若手は、また1人消えた。ドラフト1位・榎田大樹(24=東京ガス)もファンを唸らせるような投球は、まだ見せていない。首脳陣はオープン戦後半で再度チャンスを与えるとしているそうだが、安芸の二次キャンプは去年とほとんど代り映えしない選手ばかりだ。2011年、阪神選手の調整はかなり遅れている…。