「オレが辛い時期にそばにいてほしかったのに…」。棚橋は複雑な表情を浮かべた。
5・5蝶野正洋プロデュース興行「PREMIUM」(東京・後楽園ホール)に出場するドラディション藤波から「棚橋クンとやりたい」と対戦要求を受けていた棚橋。この日は新日プロからPREMIUM出場に関してGOサインを出す方針が示されたが、肝心の棚橋はかつての師匠からのメッセージにどこかつれない。
開口一番「あの藤波さんにいま、このタイミングにオレが指名されるとは」とつぶいた棚橋は、対戦オファーに「ただ、いくら藤波さんとはいえ、いまのオレの指名料はハンパなく高いッスよ。ナンバーワンのキャバ譲並みにね。それこそドンペリニヨンぐらいくれないと」と呼応。必至に平静を装い、ただただニヒルな笑みを振りまく。
新日プロで唯一いまでもドラゴン継承者を公言している棚橋だが、師匠からの対戦要求になぜ乗り気ではないのか。フェロモンボディーが続ける。「誤解しないで下さい。藤波さんとやるのが決して嫌ってわけじゃありません。いままでオレは藤波さんの後継者って勝手に名乗らせてもらってここまで来た。だから今回はその使用料ってことで闘いますよ」
2002年10月6日に後楽園ホール大会でシングルマッチに敗れて以来となる5年7カ月ぶりの再会マッチにこそ応じたが、藤波には特別な思いがあるようで「だけど、ここ数年オレが苦しかった時にどうしてあの人はそばにいてくれなかったんだ」と吐露。どうやら新日プロに“放置”されたことが引っかかっているようだ。
「藤波辰爾という人にはいろいろ積年の思いがある。早く肌に触れて思いを伝えたいッス」と棚橋。恋する乙女のようなまなざしでそう打ち明けると、悩ましげにロングヘアーをかき分けていた。