ネットには、「井上真央と栗山千明を足して割った感じだなと思ったけど、だんだん個性にひかれていきました」というファンがいた。確かにそんな感じであろうか。
演技は動きが緩慢でちょっとだけ妙、ルックスも美形に属しながらも目を瞠る美人、というわけでもなさそうだが、逆にそれが強い個性になっている。
老作家役の原田芳雄の編集者を演じた、NHK『火の魚』でも、得意のシリアスな役どころながら、見るものを安心させる誠実で独特な間(ま)、を同居させる個性が光った。
現在人気放送中の『Mother』(日テレ・毎週水曜日22:00〜22:54)では、産んだ子どもに虐待をしてしまう母親・仁美役を好演している。子供の生存を知った仁美は一路・室蘭から東京へ。
そこで一転出番が増えた6月2日放送分の第8話では、ロードムービーを見ているような尾野の演技の“リアルさ”が画面を際立たせ、まさしく面目躍如といった感。
あまりに切ない母子の関係が尾野と子役の健闘で丁寧に描かれたこの回の視聴率は、14.0%とこれまでで最高を更新した。
尾野は、新聞のインタビューで“箱入り娘”と自称。本来は、明るい普通の人のようである。また今回同ドラマの役作りのため、あえて子役の子とあまり話さないようにしている、と雑誌で語っている。
あのヤンママぶりを、演技であると聞いて驚く方も多いのではないか。
「惣菜パンかぶりついてるところで勃起した」(ネット意見)という、どこか見るものをドキッとさせる人間としてのリアルな姿−やはりそこらへんが、彼女の人気急上昇中の秘密に思えて仕方ない。番組の展開とともども、尾野の更なるブレイクが楽しみだ。(了)