巨人に復帰の上原浩治と中日を新天地の場とした松坂大輔だ。連日、両べテランの話題が聞こえてくる2018年の春、どこか懐かしい想いを抱いてしまうのは私だけではないはずだ。
■衝撃的なデビューを飾った頃
「あの頃」も今のように、上原・松坂という二人の投手の話題で持ち切りだったことが蘇ってくる。19年前の1999年。この年、二人はルーキーとしてプロのマウンドに登り続け球界の空気を変えた。
共にルーキーでありながら開幕から先発ローテーションに組み込まれ、力強い投球を披露する。その動向は春先よりプロ野球ファンの関心を集め、共にその期待に存分に応える活躍を繰り広げ、その右腕から放たれる球威は打者を圧倒し、チームを勝利に導くだけでなく、技術を超えた気迫や人間味なども感じられた。そして、シーズンが始まって間もなく、二人には共通の言葉が贈られるようになる。「エース」という言葉だった。
上原は巨人の大黒柱として球界では9年ぶりとなる20勝を挙げ、松坂は西武ライオンズ(当時)で、さらには日本代表にも送り込まれるなど獅子奮迅の働きを続け、その衝撃はもはや球界の枠におさまらず、日本のスポーツ界全体を揺るがすほどだった。
■野球小僧たちの新たなシーズン
時は経ち、二人は図らずも同じセ・リーグに属し、新しいシーズンを迎える。中日ドラゴンズでここまで二度のオープン戦のマウンドに立った松坂は、長年悩まされた肩の痛みと現在も戦いながら開幕へ向け、調整を続ける。3月に入り正式に巨人復帰が決まった上原は19日、1軍に合流し内野手との連携やサインプレーの確認を行っている。
松坂は今年38歳、上原は来月には43歳を迎える。そして、二人とも年齢を重ねただけでなく、チームでの立ち位置や投球スタイル、背番号も大きく「変化」をみせている。
先発・完投する場面はおそらくは訪れることはないだろう。三振の山を積み上げる機会も少ないはずだ。それでも、あの日の、ルーキー時代の躍動する姿を思いながら、現在の一挙手一投足を見つめる、それもまたスポーツを観る楽しさではないだろうか。
上原、松坂はあの頃のまま、ファンに夢を届ける存在であり続ける。
様々な経験を重ね、プレーする場を求めてたどり着いた「野球小僧」たちのここからを追いかけていきたい。(佐藤文孝)