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書評「雪冤」大門剛明著、角川書店

 「雪冤」とは無実の罪をすすぎ晴らすこと。死刑制度と冤罪に真正面から挑んだ社会派ミステリーだ。ちょうど17年半の空白を経て進展した足利事件と発刊が重なり、冤罪を考えるのに最適なタイムリーな一冊だ。

 当時大学生だった八木沼慎一は合唱団の2人の仲間を殺した容疑者として逮捕され、死刑が確定してしまう。事件から15年後、息子の冤罪を主張し続けてきた父の元に、メロスと名乗る謎の人物から時効寸前に自首をしたいと連絡が入る。

 途中、重罰化や死刑制度廃止論などの理論展開に顔を突っ込みすぎて話が重くなるが、誠実な書きっぷりでぐいぐい読ませる。全編が長すぎるところがあと一歩か。それでも今後に期待できる大作だ。本書は第29回横溝正史ミステリ大賞の大賞作に選ばれた。(税別1500円)

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