コーチ人事など具体的な組閣はこれからだが、星野流の新しいチーム像が見えてきた。
「チーム編成権の全てを星野サンに託すことになります。楽天は、野村克也サンにさえ選手編成権を完全に委ねたことがありませんでした」(チーム関係者)
しかも、『編成権の完全委託』は楽天側から申し入れたものだという。
今後、楽天のトレード、外国人選手獲得、ドラフト指名候補のリストアップなど、『チーム人事権』は星野氏が握る。極端な言い方をすれば、星野氏は楽天球団で“絶対君主”となるわけだ。
「星野サンの球界におけるネットワークの広さは有名です。外国人投手を見る眼も確かですし、中日、阪神時代も同じような権限を持って指揮を取ってきたので、決して異例なことではありません」(球界関係者)
大多数の野球ファンも同じことを思っているだろう。しかし、プロ野球解説者の1人はこう反論する。
「星野氏のネットワークは認めますが、勝敗の責任を全て負う立場になります。ゼネラルマネージャー、あるいはその職務を担当するフロント役員を置く組織作りが、球界の主流になりつつある」
星野氏に強い権限を与えられ、楽天入りする。その手腕の最初の見せどころが10月28日のドラフト会議である。
「楽天内でも、星野サンの強運に賭けてみようという機運が高まっています」(前出・チーム関係者)
楽天には『神の手』と称された島田亨オーナー兼球団社長がいる。05年は片山博視、06年は田中将大、07年は長谷部康平と3年連続で『当たりクジ』をひいてきた。しかし、その島田オーナーは本社業務で長期出張となり、ドラフト会議は出席できない。そこで、「星野氏に1位指名の抽選クジをひいてもらおう」との声が出始めたのだが、球団が期待しているのはそれだけではなかった。
「どうも、楽天はまだ1位指名候補を絞りきれていないようですね。星野さんに決めてもらうことになるのでは…」(ライバル球団スカウトマン)
同スカウトが予想する『楽天の1位・入札候補』は、斎藤佑樹(早大)、大石達也(同)の2人。ドラフト情報は急転することが多く、他選手が急浮上してくる可能性も捨てきれないが、仮に星野氏が斎藤の1位入札を決断したらどうなるか…。甲子園時代のライバル・田中は絶対に面白くないだろう。
両雄並び立たず−−。
「ONに代表されるように、強いチームには必ずライバルがいるんです。秋山と清原、池山と広澤、江川と西本…。星野サンは斎藤を選択する可能性も高い」(前出・同)
東京六大学・秋季リーグ戦時点での各スカウトの『斉藤評』は、あまり高くない。どちらかといえば、大石や中央大・沢村を高く評価する声の方が多く聞かれた。
甲子園で投げ合った田中と斉藤はともに実力を認め合っているが、それ以上の関係は全くない。とくに田中がそうだが、「プロで先に実績を作ったオレたちが、ハンカチ世代(=斉藤)と呼ばれなければならないんだ!?」と憤りすら感じているという。
おそらく、『監督・星野』はそこまで計算したうえで、「斉藤を獲ろう!」と言い出すかもしれない。田中は相当、燃えるだろう…。いずれにせよ、星野氏の初仕事となるドラフト会議は見物である。