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お笑い芸人 豪快伝説 其の二十二『志村けん』

 お笑い芸人。コメディアン。エンターテイナー。そんな彼たちがかつて刻んだ偉大なる伝説、爆笑列伝を紹介していく連載の22回目。トゥエンティートゥバウトは、志村けんだ。

 志村けんが、死んだ−−。1996年、こんな噂が日本を駆けめぐった。『カトちゃんケンちゃん ごきげんテレビ』(TBS系列)や『志村けんのだいじょうぶだぁ』(フジテレビ系列)などの冠番組が、終了したあとだった。ゴルフ場で脱水症状になり、搬送されたがんセンターで急死。四十九日があけるまで、公表は避ける…と、完ぺきな台本。もちろん嘘だが、有名コメディアンが逝去すると、これほどの騒ぎになることをうえつけた。

 この珍事件からもわかるとおり、志村には噂が多く、いっぽうでは、伝説のような実話も多い。

 ビートたけしが86年、フライデー襲撃事件で芸能界を干されたとき。たけしの家族、たけし軍団、軍団の家族まで、生活を工面していたのは志村だった。たけしは自著で、「おそらく、出費は3億円はくだらない」と明かしている。出所後、お礼をいったたけしに、志村は返した。「俺が勝手にやったこと。それより、今まで通り、どっちがお客さんを笑わせるか、ライバルでいてくれよ」

 志村がすごいのは、売れていない無名芸人にたいしても、態度が変わらない点だ。

 その芸人Aには、愛娘がいた。娘が、治すには300万円ほどかかる大病を患ったとき、志村は「出世払いでいいよ」とボストンバッグを渡した。入っていたのは、1,000万円だった。

 使うときは、豪快だ。

 「志村会」なる軍団が、毎年開催する誕生日パーティーは、六本木でいちばん高いといわれているカラオケボックスを貸しきり。中山秀征が幹事をつとめ、有名芸能人、芸人はもちろん、グラビアアイドル、風俗嬢、クラブホステス、AV女優などの色香もそろえる。バブルのころは、札束をチップとして女性に渡すことが珍しくなく、手にしたボストンバッグには、何束もの札が放り込まれていた。

 同棲相手は、10人以上。その誰もが別れたあと、スキャンダルなネタを暴露しないのは、手切れ金として財産の半分を受け取っているから。志村の浮気による小さなトラブルはあっても、女性が恨み節を叩いたことは、一度もない。

 現在、62歳。いまだ独身。しかし、子供はいる。まだザ・ドリフターズの付き人をつとめていたころ、同棲女性のあいだにできた子だ。しかし、将来に希望を持てないふたりの結婚は周囲に反対されて、別離。もうアラフォーになった我が子、元彼女が現在、どこでなにをしているか、志村は知らない。(伊藤由華)

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