日馬富士(元横綱)に暴力を受けた“被害者”から、付け人に暴力を振るった“加害者”となった貴ノ岩。日本はともかく、以前からバッシングが過熱していた母国モンゴルでは、今後しばらくは“完全アウェー”とも呼べる厳しい状況が続くことになるだろう。
ただ、現役を退いた貴ノ岩は、遅かれ早かれ時が来ればモンゴルに帰国しなければならない。今回の引退劇により、これまで自身の日本在留を保証してきた興行ビザが失われる可能性が高いからだ。
外国人力士が日本に在留するには、15日から3年の4種類がある「興行」名目のビザが必要となる。もちろん、期限が迫ればその都度更新が必要だが、基本的には力士である限りビザが失効することはない。
しかし、力士でなくなったということならば話は変わる。入国管理局公式サイト『在留資格の取消し(入管法第22条の4)』には、「入管法別表第1の上欄の在留資格(注)をもって在留する者が、当該在留資格に係る活動を継続して3か月以上行っていない場合(ただし、当該活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合を除きます)」という記載がある。
前述の「在留資格」に当たるのは「興行」であり、「当該在留資格に係る活動」というのは力士として相撲を取ることだが、冒頭の通り貴ノ岩はもはや“一般人”。また、自らの不祥事が「正当な理由」となるはずもない。このことを考えると、3か月後にビザが失効しても全くおかしくはない。
仮に在留資格が取り消されれば、30日を上限とした期間内に自主的に出国しなければならない。日馬富士のようにコーチに就任したり、3月に引退した大砂嵐(元幕内)のように格闘技に転向すれば“延命”もあり得るが、今のままでは4か月後が帰国の“Xデー”となることは濃厚だろう。
文 / 柴田雅人