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“被害者”から“加害者”へ…付け人暴行の貴ノ岩が働いた3方向への裏切り

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元日馬富士

 「何でだよ…勘弁してくれよ…」。恐らく、ほとんどの相撲ファンがこのような気持ちを抱いたに違いない。付け人に暴力を振るっていたことが5日に明らかとなった、平幕貴ノ岩の件である。

 日本相撲協会が発表し、各メディアによって大きく報じられているこの衝撃の一報。報道によると、忘れ物をした付け人が言い訳したことを理由に蛮行に及んだ貴ノ岩には、当面の処分として、冬巡業の休場と千賀ノ浦部屋での謹慎が言い渡されたという。

 協会による調査はまだ初期の段階ということで、今回の一件がこれからどのような顛末となるのかはまだ分からない。ただ、“被害者”だった貴ノ岩が“加害者”になったということが本当に事実なのであれば、元貴乃花親方・協会・相撲ファンの3方向に対して裏切り行為を働いてしまったと言わざるを得ない。

 昨年10月に端を発した日馬富士(元横綱)による暴行騒動の中で、元貴乃花親方は賛否両論の中、様々な形で奔走。結果的に職を辞することとなったが、暴力を受けた貴ノ岩を思う気持ちは最後まで変わらなかっただろう。しかし、あろうことかその愛弟子が暴力をふるう側に回ってしまったことで、一連の行動は全て“形無し”となった。

 多大なダメージを受けたのは、今年10月に『暴力決別宣言』を発表し、暴力撲滅を掲げていた協会側も同様。「大相撲においては、指導名目その他、いかなる目的の、いかなる暴力も許さない」という文言から始まる決意の宣言文は、僅か2か月で何の説得力も無い“死文”と化してしまった。

 前述の騒動で日馬富士が引退に追い込まれたことを考えると、これから貴ノ岩に下される処分が同様のものとなる可能性は否定できない。角界に後足で砂をかけ、なおかつ自らも土俵を去るということになれば、いよいよ愛想を尽かす相撲ファンが出てきてもおかしくはない。

どのような手を打っても再発し続け、遂に被害者にも転移した「暴力」の二文字。角界に深く根付く“大病”は、もはや完治の余地がないのだろうか。

文 /柴田雅人

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