引退が発表されてから、試合数は限られているが飯塚は元気だ。先シリーズでは3日の札幌・北海きたえーる大会で、タイチ戦に向かう内藤哲也を花道で襲撃。1984年2月3日に札幌中島体育センター別館で、藤波辰巳(辰爾)と対戦する長州力を襲撃し、“テロリスト”の異名を持つことになった藤原喜明を35年ぶりにオマージュした形になった。内藤はこれで戦闘不能になり、いったん控室に運ばれるほどのダメージを負った。
またヒール転向のキッカケ作りのため、一時的に“友情タッグ”を組んでいた天山からは2日の札幌大会で「オイ!飯塚!今度引退するらしいやないか!辞める前に俺ともう一回、マジメに戻って、俺と友情タッグ復活させようやないか!」と変わり果てた飯塚にアピールした。翌3日の札幌大会、そして11日のエディオンアリーナ大阪大会では、レアな友情タッグTシャツを見せてまで更生させようとしたが、引き裂かれてしまう始末だった。
天山と同じく、矢野も飯塚に裏切られた選手。むしろタッグ歴は矢野の方が長く、新日本ではIWGPタッグ王座を、プロレスリング・ノアではGHCタッグ王座を戴冠するなど名ヒールタッグだった。この2人が同じコーナーに立つというのは違和感があるが、飯塚のココロに変化は訪れるのだろうか。
タイチは「“飯塚のココロ”は等々力渓谷のどこかに封印されている」と天山に対して謎かけを送っており、天山は21日までに「等々力渓谷まで行くしかないか…」と頭を悩ませ12日に大阪から帰京後、直行したことをツイッターで明かしている。何か見つかったのだろうか?試合中、飯塚のファイトスタイルに異変が起こるかどうかが鍵になりそうだ。
また、因縁があるテレビ朝日の野上慎平アナウンサーは実況するのか、引退セレモニーや10カウントゴングは鳴らされるのかなど、ここまで予測不可能な引退大会はなかなかない。かつて、闘魂トリオとして組んでいたAKIRAやエル・サムライが駆けつけたら、90年代のファンは歓喜するだろう。それも天山が言うところの「マジメな飯塚」に戻らなければ意味がない。前代未聞の引退大会に注目が集まっている。
取材・文 / どら増田
写真 / 舩橋諄