11日午後5時から民主党本部(東京都千代田区)で記者会見に臨んだ小沢氏。黒のスーツに薄い水色のネクタイで笑顔で記者団の前に現れた。
「わぁ〜、マイクが一杯だ」
辞任に追い込まれた悔しさを隠すかのように、小沢氏の会見はそんなとぼけた第一声から始まった。
小沢氏は記者会見の冒頭、用意してきた紙を読み上げ、「衆院総選挙での必勝と政権交代の実現に向け、挙党一致態勢をより強固にするため、あえてこの身を投げうち、民主党代表の職を辞することを決意した」と述べた。
辞任の理由については、「今度の総選挙は悲願の政権交代を実現する最大のチャンス。党内が乱れていたのでは勝利できない。代表の職にとどまることで、挙党一致の態勢を強固にする上で少しでも差し障りがあるとするならば、本意でない」と党内の混乱を最大要因に挙げた。
辞任を決意したのは大型連休中に進退問題をゆっくりと熟慮した結果だという。小沢氏は自らの辞任が次期衆院選での民主党の勝利に貢献するとしている。次期代表については「辞めていく者が次の人について、論ずべきではないと思っています」と答えを避けた。
時折言葉に詰まりながらも、終始笑顔で語り続けた小沢氏。党内からも辞任を求める声が上がりながら続投を貫いてきた政界の“壊し屋”は、辞任の悔しさを見せまいと必死の笑顔を振りまき続けた。
記者との質疑応答の際は、発言する記者には一目もふらず、ただじっと前を見つめながら応答した。しかしテレビ局の女性キャスターからの質問に態度が急変する。
「党内や有権者からも辞任自体が遅すぎたことによって党にダメージを与えたという声もあります。離党や議員辞職も選択肢として考えられるのですか?」
その質問に小沢氏は会見で初めて質問者の方を向き「なぜ離党、議員辞職しないといけないのですか」とブチギレ寸前。
「献金事件というカネにまつわるイメージを民主党から離すために離党すべきじゃないかと」と続ける記者の質問をさえぎるように小沢氏は「私は、政治資金の問題についても一点のやましいところもありません。政治的な責任で身を引くわけでもありません」と強調した。さらに「あなたどこだっけ、会社?」と聞き返し、記者が「日本テレビです」と答えると「日本テレビでもよく国民のみなさんの調査をするべきだと思います」と小沢氏が言い返す一触即発の雰囲気に場内は静まり返った。
質問したのは帰国子女で東大卒のエリートとして有名な七尾藍佳キャスター(30)。日本テレビ系「NEWS ZERO」でリポーターを務めながらフリーキャスターとして活動している。
超エリートという肩書の一方で、一部では場の空気が読めない女性との声も。最近ではフジテレビ系列のクイズ番組「ネプリーグ」に東大美女軍団チームの一員として出演。英語問題で得意のネイティヴ発音を披露してみせれば、チームのメンバーが答えられなかった質問を「簡単すぎるのに」と堂々と言ってのけ、共演者らがどん引きする場面も。
また、山口県光市母子殺人事件で死刑判決が出た際には、記者会見に答えた被害者遺族の男性に「死刑判決が出て果たして、あなた自身は、いつか癒やされるのか、救われることがあるのか、その気持ちを聞かせていだだけますか?」と質問し、周囲の記者を驚かせるとともに遺族男性を困惑させた過去もある。
しかし、今回はそんな歯に衣着せぬ物言いの美人キャスターの活躍で、小沢氏が最後まで西松建設事件の説明責任を果たすつもりがないことが露わになった。金権政治と揶揄される巨大な利権を手放す気は小沢氏には毛頭ないようだ。次期衆院選まであと4カ月。小沢氏が神経をとがらせる矛先はもっと別にある気がするのだが…。(関 淳一)